2013年5月5日日曜日

日本を元気にする15分(「あまちゃん」NHK)

朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が面白い。「おひさま」以来の非常に面白いドラマ(全然カテゴリ違うけど)。一体何が面白いのか?素で笑ってしまうのか?のめり込んでしまうのか?ということで、
  1. 朝ドラの型破り
  2. 宮藤官九郎脚本の新しい魅力
  3. 主役も脇役も光る役者陣
の観点で紐解いていこうかなと思います。


1. 朝ドラの型破り
そもそも、2.に通じるが、宮藤官九郎を朝ドラの脚本に起用している時点で、常識を破っている。宮藤官九郎の脚本は渋谷系等と言われていた。つまり、10代後半から20代の若者に人気がある脚本家なわけだ。

他方で、朝ドラの視聴者は、主婦や会社を引退された方々、つまりは、30代・40代以上の女性が中心なのである。宮藤官九郎のこれまでの客層とは完全にミスマッチ。それなのに、宮藤官九郎を起用したNHKのプロデューサーの方にまずは拍手を送りたい。(逆に、昔、「池袋ウエストゲートパーク」等を見ていた20代の方々が、今主婦になっている、という考え方もできるのだけど、それよりももっと上の年代が朝ドラのメインターゲットだと思われる。)

で、結論として大成功している。初回視聴率は7年ぶりの高視聴率20.1%(関東地区)。04/17視聴率は22.0%(同)と近年希にみる視聴率となっている。実際、私の60代の父母も「あまちゃん」を見ている。「くどかんでしょー、超面白いよね」と言っている。私の父母が平均的な60代かどうかは別だが、かなり高齢者にも受け入れられているようだ。

また、他にも、色々と新しい観点を取り入れているのかな、と。
  • 鉄拳のパラパラ漫画
    • 鉄拳の人気を取り込んだ、と初期的には見て取れるわけですが、鉄拳の漫画の特徴をとても活かした、うまい起用だと思った
    • 鉄拳の漫画は、ほのぼのするハートフルな内容。素朴で、スッと、受け手の心の中に入ってくる。朝ドラにマッチした特性を持っていると思うわけ
  • 御法度禁止なシーン満載
    • 朝ドラは、関西が主体となっている階は、ドタバタ劇で笑いあり涙ありに仕上げる傾向があるのだが、NHK的に(?!)節度は保っているのかなと思う
    • しかし、顔芸、と言って良いくらいの表情での感情表現、ギャグかと思う様な回想シーン、宮藤官九郎ドラマによくある映像早回し、等等これまでのNHKの朝ドラのステレオタイプを壊している
朝ドラって、こんなに自由だったのか!!!と思わせる型破りな構成なわけですね。見ていて全然飽きることがなく、とても新鮮に見ていられます。


2. 宮藤官九郎脚本の新しい魅力
宮藤官九郎脚本のドラマは勿論見たことがあるが、「あまちゃん」はその中でもとても面白い。何が面白いのか、と考えてみると、宮藤官九郎の特徴を存分に活かしている要素と、朝ドラだから新しく宮藤官九郎が生み出した要素が絡まり合って面白いのかな、と思う。
  • 宮藤官九郎のこれまでの特徴
    • スピーディに物語を展開させ、視聴者を物語に引き込む。あり得ない展開必至。視聴者の期待を良い意味で裏切り続ける
    • 主役や脇役に細かいこだわりを持たせ、キャラを立たせ、お気に入りを創る。神は細部に宿る、とはこのこと
    • 巧みなセリフ回し。一人だけのセリフも面白いが、複数人の掛け合いのテンポの良さは秀逸。素で腹を抱えて笑えるっす
  • 宮藤官九郎の朝ドラ特有の特徴
    • 朝ドラは、毎日15分だけ放送される。この制約のメリットは大きいかな、と思う。宮藤官九郎のドラマは、若干くどく感じることがある。個性が強すぎるのだ。しかし、15分というコンパクトな時間は、その個性と良い距離感を創る。お腹いっぱいになる前に、一話が終わるのである
    • 朝ドラであり、東北を舞台としていることもあり、丁寧にキャラを描いているような気がする。色々な年代の人の色々な目線を丁寧に描いていて、元々ある特徴である軽快さとの触れ幅は大きく、物語に重層性を生んでいる

3. 主役も脇役も光る役者陣
主役の能年玲奈から、脇役の小泉今日子、宮本信子、杉本哲太、と、一人ひとりが非常にチャーミングなキャラに仕立てられている。

能年玲奈は、ほとんど新人なのだが、彼女の素の魅力を根底に、宮藤官九郎の脚本にガチで勝負している様に共感できる。ドラマでは、喜怒哀楽があり、主人公が成長していくが、喜怒哀楽の一つひとつの表情がチャーミングで、見ていて、引き込まれる。そして、非常に透明感があり、まさに、「あまちゃん」にぴったり。docomoのCMに出たての広末涼子を思い出した。彼女は、ブレイクするだろう。

脇役をはっている、小泉今日子、宮本信子、杉本哲太は、存在感を発揮しまくっている。彼女彼らがいないとこのドラマは成立しない。他にも渡辺えり、片桐はいり、吹越満等もいて、彼女彼らの個性が絡まりあうことで、このドラマの魅力は何倍にもなっている。

加えて、荒川良々、皆川猿時、村杉蝉之介、等の宮藤官九郎に頻出の役者陣が細かい演技で笑いという花を添え、加えて、小池徹平等の宮藤官九郎ドラマ初顔の役者陣も体当たりで演技をしており、全体として、ドラマは一秒たりとも油断できない魅力さで満ちている。


まさに、日本を元気にする15分のドラマ。とても面白い仕上がり。ドラマはまだまだ序盤で、今後の展開が気になるところ。更なる盛り上がりを期待したい。