2013年2月26日火曜日

「戦略」にガチ (「良い戦略 悪い戦略」リチャード・P・イメルト)

「戦略」という言葉が氾濫している。例えば、今日受信したDMの中に、「戦略」という言葉が幾つあったか数え知れない。この世の中は、それほどまでに「戦略」を求めているのだろうか?ある意味、それは、正、なのかもしれないが、ただ、使われている「戦略」の意味合いが異なっているだけなのかもしれない。「戦略」という言葉は、バズワードになっている。結果、本書によれば、こんな現象が散在している。
  • 戦略を野心やリーダーシップの表現とはきちがえ、戦略とビジョンやプランニングを同一視している
  • 例えば、とあるCEOは、「勝つまで続ける」のが戦略、と言った。興奮と熱狂とノリをこね合わせた様な「戦略」が悲しいかな次第に一般的になっている
  • 「実行面に問題がある」と嘆く経営者は、たいていは戦略と目標設定を混同している。戦略を立てているつもりで業績目標を立てているケースは珍しくない

非常に「あるある」な現象で、戦略立案に携わる/携わったことのある人には、上記の様な現象の遭遇したことがある人が少なくないのではないだろうか。

そんな中、本書は、巷に流布する曖昧な戦略の立案と実行の現状に対して、ガチで切り込んでいる。戦略を立案するとは何を意味するか?良い戦略の論理構造に含まれる要素とは何か?数多ある戦略の本が取り扱わなかった厄介なトコに切り込んでいる。そういう意味で、この本そのものが戦略的なのだな、と読みながら思ったのであった。戦略の立案に関わる全ての人に。

2013年2月23日土曜日

違いの根本は、使命感、なのかもしれない (「結果を出すリーダーはみな非常である」富山 和彦)

経営共創基盤の富山氏のリーダー論。この人は、ハンズオンで企業再生に携わるケースが多いことから、現場感のある現実的な論調で良いですね。上滑りしていない。会社を変えるための具体的なアプローチが詰まっているわけです。

加えて、この人は、なかなか知性が豊かな方なので、ビジネスだけでなく、歴史や政治等の多面的な観点から、メッセージングを導出してくるので、内容に厚みがあって、読み応えがあるわけですね。

そういった変革を起こすリーダーにおける現実的な要諦について、最前線の経験論を文章レベルで理解する、加えて、現実に関する多面的な分析に関する一つのアプローチを実感する、といった観点で、一読の意味があると思われる。



ただ、30-40代のミドルクラス向けに書かれているのだが、中でも、有名大学を卒業し、重厚長大企業に勤めている方々がメインターゲットになっていて、優秀なのだろうが、会社や社会を変えるために能力を使っていない/使えていない人たちの考え方を変えるための内容がかなり展開されていたりするので、個人的には今更感がある内容も多く、物足りなさも残る。

逆に、それが、一般的なエリートの現在の立ち位置ですか、それって、随分前から全然変わらないんですね、という時代の変わらなさにびびる、っていうのがあったりで、読んでて、ちょっと物悲しくもなりました。

2013年2月11日月曜日

ビターな下積みは隠し味に (Sadaharu Aoki)

昨日、テレビで、Sadaharu AOKIの特集がされていた。元々3-4年前から丸の内の店舗には度々足を運んでいて、当初持っていた勝手なイメージとしては、若いうちから成功を収めていて、女子アナ(元TBS 雨宮塔子)と結婚してて、ちょっと調子にのった方が、Sadaharu AOKIという人なのだろうな。でも、そんな勝手なイメージとは違って、色鮮やかかつ繊細な造りであるケーキはオサレかつ美味しくて、幾つかあるオサレ系スイーツの中では、特に好きなブランドの一つ。って感じだった。

しかし、テレビ放映は、そんなイメージを裏切る内容であった。実は、結構な苦労人で、パリに23歳で渡ってからは、6年間皿洗い。その後、3つ星レストランで働いても、自己主張が激しくチームで動けない、という理由でクビになる、など厳しい経験をしてきた。最終的には、パリの自宅で焼いたパンケーキを日本で通販的に販売することで、300万円貯め、33歳で自分のお店を出店。そこから努力を続け、店舗を増やすと共に、パティシエだけでなく、ショコラティエにもなって、最近はパリで名誉ある、パリ市長賞や最優秀パティシエ賞等を受賞している。

(余談だけど、雨宮塔子と結婚したのは、彼が有名になる前の2002年(やっと一店目を開業した頃)のことなので、彼女目線で言えば、パリのトップパティシエと結婚したわけではなく、そこから、立派なパティシエ&ショコラティエを育てたっていうことになるわけで、スゴイ目利きと言えるかも。無駄に「チューボーですよ!」の初代アシスタントではない、っていう)

テレビ特集を通じて、思ったのは、ネアカで、苦労を全然見せない感じ。他方で、健全な上昇志向は強くて、良い意味で結果に固執していて、非常に努力家。苦労しただけあって、商売気質でサービス精神もあって、結果を得るためにはなんでもやる、という行動的・情熱的な部分を持ち合わせている模様。そして、全体的にとてもチャーミングな印象であった。

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ということで、早速、久し振りに丸の内の店舗に行ってみた。テレビ放映があったせいか、カフェスペースは今日は営業されていなくて販売だけになっていて人が溢れていた。9割が30代前後の女性客で、テレビでフォーカスされていたせいか、ショコラを買う人が多い模様。彩り鮮やかなBonbons chocolatなどが売れに売れてましたな。

私たちは、ケーキを購入。写真はこちら。デリケートに複数の味や素材が甘く混ざり合っていて、大変美味しゅうございました。とてもハッピーな時間を過ごすことができました。洗練されたロゴが好きなんだけど、加えて全体的に曲線で形作っているステキなパッケージも一緒に掲載〜。やっぱSadaharu AOKIは鉄板だわ、これ。

「企画」の真髄 (「AKB48の戦略!」秋元 康 × 田原 総一朗 )

秋元 康という人の企画力てヤツは半端ない。30年以上も芸能界のトップを走っている実績もそうだけど、言動の一つひとつに、しっかりと意味合いが存在しているものだからスゴイ。だから、秋元 康を中心とした特集や本はついついチェックしてしまう。で、買ってしまった本がこれ。



AKB48に関する取組みを中心として、秋元 康の企画力について、田原総一朗によるインタビューによって探られているのだけど、ほとんどの内容について、こちら↓の本と被るね。そして、基本的に、秋元康の「企画」に関するアプローチというか、行動原理というモノはこの本に書かれているわけですね。本の中身が本質的過ぎて、彼の企画がヒットし続けるにも頷けるリッチな内容。



「企画」という仕事に携わる人は、みな読んだ方が良いのではないでしょうか。例えば、こんな内容が書かれている。とても示唆に富んだ内容。詳しくは上記本にて、どうぞ。
  • ほんの小さな「こだわり」や「思いつき」「ヒント」などから生まれる
  • みな似た様な能力があって、人間なんてあまり変わらない。どうやって人よりも前に出て、企画を売り込んでいくか。その時に必要なのは根拠の無い自信
  • 整理できない情報こそ重要。混沌とした情報こそ価値ある情報の原石のことが多い
  • 自分で情報と読み解くときは、あくまで独断と偏見で
  • 独創性とは裏切りから生まれる。他人が書きそうなテーマではまず負ける
  • マーケティングより自分を信じることが大事
  • 知らないものを頼むことが、昨日とは違う、今日を探すこと
  • とにかく考えろ。24時間考えろ。何を考えるかを考えろ。

2013年2月1日金曜日

考え抜かれた末の狂気 (「自分の中に毒を持て」岡本 太郎)

誰もが、毎日、何かに悩み、考え、行動している。私たちが目にしている誰かの行動の後ろには、その人の思考の葛藤があるわけだが、その葛藤を目にすることはほとんどなくて、仮に目にしたとしてもほんの一部でしかない。しかし、私たちは、目にみえる行動と、目に見えるほんの一部でしかない葛藤、そして、そこからできるわずかな想像から、その人のイメージを創り上げ、何かの判断をしている。

と、そこまで難しい話をしようとしているわけではなくて、岡本太郎の話。
  • 芸術は爆発だ
等のメッセージで有名で、イカれた芸術家のおっさん、というイメージを持っていたくらいで、これまで引っかかる何かを持つことなく過ごしてきて、Wikipediaでチェックすらもしていなかった。しかし、とある起業家が、好きな本として、こちらを取り上げていて、とりあえず読んでみるか、という軽いテンションで読んでみたのだが、最初から最後まで心動かされる内容だった。


芸術家とは、感性が鋭くて、五感で捉えた何かを、直情的に何かの形として表現するモノ。そんな勝手なイメージがあった。岡本太郎の様な刺激的な言動をする人は、その傾向が強くて、知性とは異なる、確実に普通の人とは違う感性が存在しているのではないか、と思っていた。

しかし、そんなイメージを全く裏切る内容だった。18歳でフランスに渡り、ソルボンヌ大学の哲学科で、なぜ絵を描くか、の解を得るために、哲学、心理学、そして民俗学を学び、パリの思想家達と前衛的な運動をしてきた彼は、一つひとつのモノゴトに対して、考え抜いた末で、普通の人には狂気とも考えられる様な、非常識な選択をし続け、後世に残る芸術作品を創ってきたのだ。

そんな彼の文章には、心を動かす突き刺さる内容が多い。常識とは異なる逆張りの思考をただしているわけではなく、豊かな知性と感性から深堀り、導出された思考からくることがわかる。途中から付箋をつけるのをやめた。全ての人に読んでもらいたいレベル。