2012年12月31日月曜日

段ボールの開梱に"美しさ"を宿す (ZARA)

子供服にも沢山種類があり、色々なメーカーが子供服市場で凌ぎを削っている。その中でも、個人的には、ZARAが好きだ(靴はミキハウスしか買わないけど)。ネットに掲載されているのを見て、買うケースが多い。KIDSとBABYとでセグメントは分かれるのだが、KIDSは店頭にも多くあるが、BABYを店頭に置いているお店は少ない。2-3歳の年齢なので、kIDSで合うサイズがあるのだが、BABYの方がカワイイのが多くて、よくBABYのモノをネットで買うことが多い。

しかしながら、ZARAはファーストファッションのリーディングカンパニーである。ファーストファッションは、よくマスコミ等では間違った説明がされているが、企画から製造、流通、販売のプロセスの期間が短くて、速いことからくる。売り切れ御免のファッションモノがほとんどで、品薄のモノが多い。GAPやUNIQLOと、H&M, Discover21、そしてZARAはビジネスの仕方が全く異なるのである。

と、そんなビジネスモデルの話を深堀るつもりはなくて、ZARAをネットで買物をした話である。ファーストファッションゆえ、availableなサイズは少なめなことが多い中、モノを選別し、とあるセーターとパンツを購入した。数日して、届いたモノは、なかなかの満足したものであった。しかし、そのことを書きたいのではなくて、段ボールのことを書きたいのである。

洋服を出す前の段ボール


洋服を出した後の段ボール


一目瞭然の美しさが、洋服を出した後の段ボールにあるのである。

洋服を段ボールから出す。元々段ボールにある折り目をもとに折り込むことから、段ボールを畳む段階で入れる力はゼロに等しい。そして、他の段ボールケースには、テープが貼ってあって、それをカッターか何かでカットしてから、といったケースが多いが、そのテープすら存在しない。折り畳むプロセスは固められており、かさ張ることもなくて、ゴミ出し前の収納も、ゴミ出しをする段階も、実に容易に済ませることが可能である。

以上が顧客目線からの特徴だが、ZARA目線で言えば、
- 段ボール自体において無駄がないことによる、積載効率向上による物流費減
- 段ボールのみの利用による無駄なツール(テープ等)を非利用による物流費減
- テープ等を用いない最小限の物流実現による環境負荷低減、そこからのCSR効果増
- 商品を受け取った時の上記顧客満足度向上による、リピーター増への寄与
等があり得るだろう。

これらを見ていて、思い出すのは、APPLEのパッケージング。APPLEは、顧客との接点全てに最上の経験を与えようとする。結果、パッケージングの概観、そして内部構成全てに感動的な細工をしていて、パッケージを開けた時の美しさから、APPLEの製品を買った喜びを感じさせられる、わけである。

ZARAに、そこまでの感動的な経験が内在しているかどうかは別だが、こういった取組みというのは、物流部門であったり、品質部門のボトムアップ的な取組みだけでは実現しにくいものであることから、会社ごとのトータルなエクスペリエンスデザインの考え方や品質への考え方が垣間みられるなぁ、と思えるわけで、そういった点を見つけられた会社に対しては、個人的にはかなりマインドシェアがあがるのですよね。

2012年12月24日月曜日

本質とは、変わらないモノのことを言う (「失敗の本質」野中郁次郎ら)

第二次世界大戦の敗戦要因の分析、及びリーダーシップにフォーカスした分析の二冊。



これらの本を読んでみると、組織として、競争環境下で、目的を達成する上で、障壁となること、そして、その中で必要となる要素、というのは、戦争も、企業競争も変わらないということがわかる。失敗の本質、というモノ。

失敗の本質を浮き彫りにする為に、第二次世界大戦の史実を丁寧に分析し、まとめあげたのが先の二冊であり、特に、「戦場のリーダーシップ編」は、現代の企業競争の文脈にも当てはめやすく、示唆に富んでいる内容となっている。

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少々唐突だが、一部の特出しとして、「戦場のリーダーシップ編」の冒頭にあるフロネティックリーダーと戦略に関する記載を以下に抜粋する。

  • 個別具体の物事や背後にある複雑な関係性を見極めながら、社会の共通善の実現のために、適切な判断をすばやく下しつつ、みずからも的確な行動をとることができる「実践知」のことをフロネシスという。そうした知を備えたリーダーがフロネティックリーダーだ。
  • 戦略の構想力とその実行力は、日常の知的パフォーマンスとしての賢慮の蓄積とその持続的錬磨に依存するのである。戦略は、すべて分析的な言語で語れて結論が出る様な静的でメカニカルなものではない。究極にあるのは、事象の細部と全体、コンテクスト依存とコンテクスト自由、主観と客観に向かって実践的知恵である。それは、存在論(何のために存在するのか)と認識論(どう知るのか)、あるいは理想主義とプラグマティズムを、実践においてダイナミックに綜合する賢慮そのものであろう。戦略の本質は、存在をかけた「義」の実現に向けて、コンテクストに応じた知的パフォーマンスを演ずる、自立分散的な賢慮型リーダーシップの体系を創造することである

戦略やリーダーシップの話は、そこら中に溢れているわけだが、上滑りしている内容のモノが多い。はて、戦略とはXXX、で、それは自分たちの目的を達成するのに本当に充足したモノなのだろうか、と。しかし、上記の内容は、一面的な定義に留まらない実践的な内容になっている、ということで、ちょっとひっかかったためですね。なかなか良いことが書かれています。


肉とおもてなし (大門 牛の蔵)

私はホスピタリティには、うるさい方だ。なぜか?と考えてみると、学生時代に飲食店で働いたり、クリスマスにケーキを販売したり、と接客業を経験してきたし、新卒で直ぐに国内営業の統括業務をしていたので全国津々浦々の営業マンの方々の礼儀作法の洗礼や現場でクライアントや最終顧客と接していく中で一つひとつの言動がビジネスを円滑にするし、最終的にお金を継続的に頂くことに繋がる、ということを知ったという実体験が大きく影響しているかもしれない。

しかし、普通に生活をしていると、おもてなし、がない人に遭遇することが多い。仕事をしていても、消費生活をしていても、ただ何となくの活動をしているだけで、相手が何を考え、求めているか、相手の背景には何があるか、を考えて、活動している人は少ない。何を提供するか、の前にこれらのことについて、感じ、考え、ときには、想像してみないと、相手の心を動かすような何かを提供することはできないのだが。

と、いきなり難しい話になったが、クリスマスイブに、大門の焼肉屋「牛の蔵」に行ったお話。今日のお肉は、グランドチャンピオンという賞を取ったお肉らしく、実にクオリティの高いもので、メニューの一部(赤み系)が用意できなかったりだったんだけど、ロースやカルビ等、脂がノリにのってて、素晴らしく美味しかったわけですね(後半に写真有り)。

で、ただでさえ、非常に美味しい焼肉だったのだけど、それに加えて、接客が素晴らしかった。これぞ、おもてなし、というヤツだな、と思った訳です。
- 超聞き取りやすい、音節音節でメリハリを効かせた話し方(しかし遅すぎるわけではない)
- メニューの内、今日だけの変化点について、適切な量の説明を提供
- 一枚目か二枚目のお肉を食べ終わった後に、早々に網を交換
- 烏龍茶を飲み終わったら、直ぐに、お茶またはお水を持ってくる
- 注文が出揃って、落ち着いたら、適当な注文取り
- 注文取りでは、過去の注文内容を踏まえた、レコメンドも提供
などなど、コミュニケーションの一つひとつを丁寧に拾い、それらの機会において、適切な情報や動作を提供していたわけですね。素晴らしかった。

私のテーブルをご担当されていた方だけでなく、店長の方も同様の質をもたれていたので、店全体で、おもてなし力が非常に高いのだと推察する。焼肉屋でこのレベルの接客を受けたことはない。段違いに凄いレベルのおもてなしだった。お肉がおいしい、そして、おもてなし力が高い、とくれば、リピート率は非常に高いことだろう。私もまた行ってみたいな、と思う。


最後に、お肉写真をば。ううむ、それにしても、実に美味しかったー。

こちらは、ロース。ロースでこんなに脂が入っているっていう。



中落ちカルビと、ハラミ。中落ちカルビはかなりヤバかった。


焼きしゃぶっていうモノ。しゃぶしゃぶの様なお肉を、焼いて食す。


2012年12月23日日曜日

虹色のCMと曲 (She's a Rainbow)

iMacのCM曲ですね。ローロングストーンズによるShe's a Rainbow。



なぜか、この曲が耳に蘇って、iTunesで買ってみました。当時は確か大学生の頃で、スティーブジョブズが復帰してすぐのプロダクトだったのではないだろうか。彼は、このプロダクトに、そして、このCM、この曲に、どんな思いを込めたのだろうか。

ローリングストーンズなのだけど、なんだかキラキラして、鮮やかな観賞後感を残すのよね、この曲。カラフルでポップなプロダクトととてもマッチしている。この時代のパソコンはゴテゴテして重々しいものばかりだったので、かなり異なるポジションをとったことだろう。

 

チラ見せの極み (COMME des GARÇONS)

最近iPhoneにしたせいか、毎日の生活の効率性がかなり向上した様に思う。そもそもの動作が速いし、User Centerd Designゆえ機能間がシームレスに繋がって、色々なコトの使い勝手の負荷が実に低いし、アプリがやはり良いし(アンドロイドとの違いはいまいち検証できていないけど)、容量がそこそこ多いのにしたので、アプリを制限無くDLしまくるし。

と、色々と良い所はあるのだが、中でもデザインが良い、というのがあるわけである。スティーブジョブズが頼りにしていたデザイナーであるジョナサンアイブによる徹底的なまでの洗練から生まれるデザインの美しさは、ジョブズがいなくなり、iPhoneが5になっても顕在なのである。

しかしながら、iPhoneにする前から私が抱いていたささやかな憧れ。それが、iPhoneケースをすることであった。iPhone以前のスマホは、そこまで売れているわけではないので、ケースの種類はそこまで多くなかった。他方で、iPhoneケースのバラエティの多いこと多いこと。中には、私も欲しいと思う秀逸なデザインのケースがあったわけである。

そんなわけで、iPhone5にしてからというものの、私はケースをちょこちょこ探していた。で、買ってみたのがこちら、でございます。





















COMME des GARÇONSのPLAYシリーズのフィリップ・バゴウスキーのオブジェをあしらったヤツですね。こちら、二個買いしております。どちらも捨てがたいデザインをしているのと、実は2,000円/個ということで、まあいっか、といった具合に。現状は、右のカラフルなモデルを使っていますね。左のは、セリフが多く入っているクールなモデルでこちらもなかなかいい感じ。その内換えたいと思います。

フィリップ・バゴウスキーのオブジェは、基本うるさいなと思ってて、Tシャツやらポロシャツやらを着ている人を見ていると、Rejectモードに入ってしまう訳ですが、スマホカバーのような小物で、たまにポケットから出して目に入る程度のフリークエンシーならありだろ、ということで、購入に至っているわけですね。これも、前にも書きましたが、気づく人が気づくんじゃね、ラインですね。チラ見せの極みなわけですね。いやー、もう、チラチラ見せていきますよ、これ。

2012年11月26日月曜日

心のスキを突く気の置けないヤツ (トミカ)

2-3歳の子供を持つ親にとって、トミカってヤツは本当に油断のならない会社である。繊細な造りをする模型は、子供の心を掴むだけでなく、お財布からお金を出す親の心もいとも容易く突き動かす。

幾つか例を出してみると、まずは、郵便車。とりあえずリアルさを認識頂けることだろうが、実物を見てみると、その質の高さに時間の過ぎるのを忘れてしまう経験をしてしまう。



で、蒸気機関車。なかなか精緻にできている。そして、レクサスIS。まあまあ、ここらへんは普通にいいよねー、的な。いいよねいいよねー、的な。



からの、水族館トラック!水族館でも、トラックでもなくて、水族館トラックて!!今まで見たことないよ、実物を!



ということで、上記はごく一部にしか過ぎないのだが、車という枠の中で現実世界を絶妙の確度でスライスして、精緻な模型に仕上げているトミカの魅力というか実力を垣間みられたのではないだろうか。

しかし、この模型の本当に油断のならないトコロは、玩具屋だけでなく、本屋等も販路としているトコロである。親が幾つかの本を見て、買ってみると、その近くの子供コーナーに、本屋であるにも関わらず、模型コーナーがある。自分が、求めていた本に出会い、手中におさめた中、子供にそんな時間をつきあわせてしまった引け目から、そのレジ横のトミカ模型コーナーに立ち寄ってしまい、一つ二つと買ってしまう。そういったケースは少なくない。

その一つの要因が、価格である。メーカー価格は378円。500円というワンコインを遥かに下回り、400円をも切る価格帯は財布を緩めるに十分なポイントなのである。しかし、この模型の種類の多さといったらなかなかのもので、フリークエンシーは高く、トータルコストはなかなか危険なレベルに達する。

そこで出てくるのが、Amazonである。Amazonには、トミカコーナーなるものがあり、かなりの安価さに仕上がっている。先の模型で言えば、
  • 通常価格:378円
  • Amazon価格:236円(▲38%)
普通に考えれば、Amazonで買わない理由はない。だから、クリスマスプレゼントは、間違いなくAmazonで買うべし、なのである。在庫薄になる前の11月に買うべし、なのである。しかし、こと模型については、店頭での引け目×衝動買い価格、というヤツによって、そんな経済的な判断がなかなかうまくできなくなってしまったりしてしまう。

そんな気の置けないヤツ。トミカの模型。まだまだ付き合っていかないと行けない代物。地味に、Amazonで幾つかのモデルを買っておいて、先の様な本屋店頭での引け目を感じた時には、鞄から、既に買ってあった新品のモデルを出して、子供に上げるという、時間差攻撃。とりあえず、次の機会には、この作戦を試してみたい。

2012年11月25日日曜日

19×19の世界の物語 (ヒカルの碁)

父と義父が、東大在学中から囲碁をやっていたということで、孫には囲碁を教えたいという話が出たりする。私も、小さい頃に少し嗜んだようだが、物心がついた頃にはやめてしまっていたようだが、自分の子供が囲碁をするのも悪くないかも、とか思ったり。そんな中、「ヒカルの碁」を手に取ってみた。一気読み。実に面白かった。9巻までが特に(集英社文庫全12巻で)。


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主人公は小学六年生の頃に、祖父の物置で、古い碁盤に遭遇し、平安時代の棋士であった亡霊 藤原佐為に取り憑かれる。藤原佐為は江戸時代に本因坊秀策にも取り憑いていたのだが、本因坊秀策は囲碁の歴史を振り返って最も強い棋士であったのではないかという位の強者。藤原佐為はとてつもなく強い棋士であったのだ。

主人公は藤原佐為と共存していく中で、近くの囲碁サロンで、同じ年齢の少年と碁を打つ。その少年は、名人を父に持ち、その年齢では圧倒的な実力であることから、同年代の大会にも出ず、棋院にも入らない天才少年であったのだが、藤原佐為の言うままに碁を打ったところ、主人公はその天才少年に勝ってしまった。主人公と天才少年とのライバル関係の始まりである。

最初は言われるままに、碁を打っていた主人公であるが、ライバルである天才少年に感化され、碁の面白さに目覚め、のめり込んでいき、自分で碁を打っていく様になる。また、取り憑いている藤原佐為からの碁の訓練を受け、とても速いスピードで、実力を上げていく。そんな主人公の成長の中で、やがて、藤原佐為は成仏され、主人公から去っていくのである。

主人公は、藤原佐為がいなくなったことで、自分を見失い、囲碁を打たないことを心に決めるが、ある時、囲碁を打たなければいけない状況になり囲碁を打ったときに、自分の中に、藤原佐為の棋風があることに気づき、自分の中に藤原佐為が生きていることを認識し、自分は碁を一生打っていくことを心に決めた。
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物語は、藤原佐為と碁を打っていく過程での主人公の成長であり、更なる高みへと持ち上げることができるライバルとの関係性の部分が核であって、物語のスピード感に惹き付けられる。また、Death Note、バクマン。の作画の小畑健の絵の美しさが物語を一段高いレベルに引き上げている。


2012年11月24日土曜日

1,000 books in your pocket (kindle store)

1,000 music in your pocket

11年前のiPodのキャチフレーズ。このキャッチコピーが全てを変えた。iPodの成功がなくして、今のAppleの成功もなかったのだから。このブログのタイトルは、そのコピーを倣っている。musicではなくbookであり、AppleではなくAmazonの話なのだが。



最近kindle whitepaperが盛り上がっているが、少し前から、kindle storeが始まった。マンガの第一巻が100円を切る値段とかで、利用のハードルを下げようとする取組み等がされているが、それほど価格が下がっているわけではないな、と思ったのは私だけだろうか?音楽の場合は、一曲250円(昔は200円)。CDのシングルが二曲で1,000円なので、一曲あたり▲50%の安価さであることを考えると、あまりコストメリットを感じられない人もいるのではないだろうか。

しかし、1,000冊をポケットに入れられることは、魅力には違いない。まだまだ品数が少ないのだが、何冊か買ってみた。隙間時間に何気なく読める本の選択肢が多い、というのはなかなか嬉しいことだな、と思う。更に、今の時代は、クラウドなので、いきなり便利。私は、kindle whtepaperを買ったわけではなく、apple製品でkindleのアプリを使っているのだけど、iPhoneでも、iPadでも、どちらでも読めて、状況に応じて最適なデバイスで読めるというのはなかなか魅力的だ。

でも、使ってみて思うのは、やはり三次元の本を、二次元の画面に制限する、というのは少々不便を感じるな、というもの。本に付箋を貼るとか、自分が読みたい所を自由に読める感覚とか、そういった三次元であるが故の魅力や便利さがなくなっているな、と。

まあ、今後、この領域でも色々な改善が加えられていくのだろう。個人的には、ゆるい本は、kindle storeで、という使い分けをしようかなと思っています。さくっと読む程度ならば、先の様な三次元的な魅力が低減されるのでね。

電子書籍にすることは、ほとんど工数が発生しない作業なので、今度加速度的に品揃えが増えるだろう。本好きには良い時代になりましたな。

2012年9月1日土曜日

「気づく」のグループ的方法論 (「気づく仕事」 博報堂 研究開発局)



ビジネス、特に、企画という仕事では、「気づく」ことが重要である。ビジネスで収益や利益を上げるためには、顧客にとっての新しい何かを創造する、他の企業や商品・サービスとは違う何かを創造する必要があるわけだが、その源泉は、「気づく」ことから始まるからだ。

しかし、なかなか「気づく」ことはできない。予定調和に流され、毎日の忙しさにさらされ、何の違和感も感じず、いや違和感を感じたとしても対峙せずに、過ごしてしまって、何かに「気づく」こと、それを基点とした創造活動をしている人は少ない。

この本では、どのように「気づく」か、について、かなり考えられている。通常、「気づく」ことにフォーカスした本は少なくて、代わりに、クリエイティブシンキング等のアイデア創出の方法論に関する本が多い。

しかし、「気づく」ことは、何かを想像する際のタネなので、そのタネがないで、タネの育て方(アイデア創出方法論)を知ったとしても、良質なアウトプットはできない。片手落ちになってしまうのである。

よって、やはり「気づく」ことは極めて重要だと考えるわけだが、「気づく」ことに関する方法論がないわけではない。しかし、通常、観察法等による商品・サービスの潜在的課題・ニーズの特定といった、個人的なアプローチに依存しているモノが多い様に思う。これは、IDEOの本を読むと、あるパートで非常に詳しく書かれているので、別途そちらを読んで頂きたい(この本は、その内容だけに留らない良書だが)。


他方で、この本は、グループで「気づく」ことを促進する方法を提示している点で新しい。本中では、「共同脳空間」と言っている。人が何人か集まり話あうことで、「気づき合う」ということを方法論化しているわけである。

読んでみると、コンサルタントによるファシリテーションやブレストの方法論に類似しているように思われる(ホンダのワイガヤもこんな感じ?)が、「共同脳を駆動するさまざまなことば」として、人が集まって話をするときに、どのような言葉を使って話をすれば、話が広がり、深まり、「気づく」ことができるか?が具体的に書かれているのが、博報堂的なトコロ。

「気づく」ことについて、なかなか考えられていて、結構良いよ、この本。

2012年8月30日木曜日

心を動かすコミュニケーションの本質 (「広告コピーってこう書くんだ!読本」 谷山雅計)



多分、コピーライターになりたい、っていう気持ちが僕のどこかにある。数文字、数行で生活者の心を動かす仕事であり、マーケティングという機能の結晶化された仕事であるように思うからだ。

しかし、実は、仕事をしていて、同じ様な感覚を持つことがある。結局、「要は、XXXです」と言って、納得してもらって、相手に動いてもらう、ということをする時がそれだ。何かのテーマに対して、考えて、資料を作成してみて、そこで何を言いたいのか、をExecutive Summaryでまとめる時や、各チャートのヘッドラインを書く時といったビジネスのコアコミュニケーションが類似していると思うわけだ。制約する諸要素は多分に異なる訳だが。

脱線すると、プロジェクトのプロジェクト名を考えるときがちょこちょこある。プロジェクト名は、プロジェクトの内容を如実に表現して、そのプロジェクトに属す人や関係する人たちにそのプロジェクトの内容を明確に理解してもらうと同時に、そのプロジェクトへの共感を持ってもらったり、エンハンスする力も内含してある必要があるわけだが、色々な観点や要素から名称を考えて絞り出してみて、私の考案したプロジェクト名称が採用されたりもしていた。それって、更にコピーライターに近い仕事だな、って思う。

そんな風に仕事をしている時に、思う時もあるし、道を歩いていて目に入るコピーやCMの結晶化されたメッセージングを見て、色々考えることもありつつ、自分でもコピーを書きたいなー、って思ったりする。勿論自分で勝手に書いているわけだが、誰か、コピーを書いて欲しい人いません?Twitter経由のメールでご連絡でも頂けたら。お気軽にご連絡頂けたらと思います。

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と、そんな中、読んでみたのが、博報堂出身で、コピーライターやクリエイティブディレクターをしている谷山 雅計氏の本書。代表的な作品はこちら。
  • 資生堂 TSUBAKI「日本の女性は、美しい」
  • 新潮文庫「Yonda!」
  • 東京ガス「ガス・パッ・チョ!」

本のコンセプトとしては、良いアイデアを出すためには、良いアイデアを発想するための体質を創る必要がある。発想法を知っても仕方ない。というもの。フレームワークやら何やらと色々とそこらへんに転がっているわけだが、毎日のアクションに結びつく習慣を身につけないと継続的に良いものを創出できないよ、という本である。

全体の総括としては、実に本質的な内容であった。物事を考えることについて、どのように考えるか、伝えるか、について本質的に具体的に考えられている。コピーに限らず、何か新しいことを考えること、つまり、企画する、ことに関する本質的な内容であった。そういう意味で、企画に携わる人は読んだ方が良いと思う。幾つかのポイントについて、取り上げてみたい。

「なんかいいね」禁止
何かのモノやコトに遭遇して、「いいね」と言うことがある。「カワイイね」とかも同様に。でも、何が良いのか?何がカワイイのか?を具体的に併せて発言する人は少ない。それは、感情の動きを示していて別に悪いことではないが、そのモノやコトの「受け手」でしかないのである。もし、「作り手」になりたいのだったら、なぜ良いのか、何が良いのか、を考えていかないと、何か良いモノ・コト、何かカワイイモノ・コトを自分たちで創造し、提供することはいつまで経っても出来ない。これは、コピーだけではない、企画の人全てに通じる話。

「たくさん」コピーを書く背景
コピーライターは、一晩で100本等のコピーを書いたりする。よくそれだけ書くなぁ、というのもあるけれども、ただ書くだけではダメである。それぞれのコピーに根拠が必要である。なぜ、そのコピーが存在するのか、という問いへの答えが。コピーの対象は、それが一つだけこの世にポコッとあるのではなく、色々な人やモノとの関係を色々と持っている。よって、これらの関係を明確化し、それらに対応付けたコピーができる、ということになる、フレームワーク的には。ただ、ここでは関係がどれだけ見えるか?対応付けたコピーを考えられるか?で論理では片付けられない観察力、洞察力、その前提となる感性やらのハードルがあるわけだが。

意味で書いて、生理でチェック
根拠を持って、先述の様に沢山書いていくのだが、最終的には、そう思っている人が本当にいるのか?という顧客目線での問いにしっかりと答えられないといけない。結局、生活者の心を動かす何かを創造しないと意味がないわけなので、一次的には論理で書いたとしても、最終的には生理で判断しないといけない。そうしないと人の心は動かせない。

2012年8月4日土曜日

気づくヤツだけ気づくライン (PLAY COMME des GARCONS × JACKPURCELL)

靴って、自分がイメージしているモノがなかなか無かったりする。だから、もし、欲しい靴に出会った時には、直ぐさま買わなければならない。

さて、そこで出会ったのが、PLAY COMME des GARCONSとCONVERSEのJACKPURCELLとのダブルネーム。














実は、ALL STARとのもあって、ローカットだけでなく、ハイカットも。













さて、私は、どれを買ったでしょうか?

賢明な人ならお分かりの通りのPLAY COMME des GARCONS × JACKPURCELLなのではあるが、内、黒の方、というのが正答である。生地黒に黒ハートていう。

冒頭に書いた通り、渋谷西武で見つけたのが、サイズがなくて、近隣店舗の在庫状況を調べてもらい、渋谷PARCOで即買いした感じ。

恐らく、ALL STARのローカットの白を買う人が多いだろうが、私は、これらの理由からの選択。
  • 何気にJACKPURCELLのシルエットが新鮮だったのに加えて、巷で流布されているALL STARのシルエットは避けたい
  • フィリップ・パゴウスキーのデザインによるハート型オブジェの赤は、如何にもギャルソンて感じで避けたい。そこら中のオサレ求道者が付けてるよ、それ。ポロシャツとか絶対着たくないって
  • 黒生地に黒のハート型オブジェは、暗闇に隠れている「魔女の宅急便」のジジっぽくてかわいいし、面白い
多くの人が選ぶようなモノを選びたくない、他のどこかに容易にあるようなモノは持ちたくないし、気づくヤツだけ気づくラインを狙う、というのがあるわけだ。代官山や原宿、表参道の敷居が高いショップに入って、直ぐに声をかけられれば良いよみたいな(ちょっとうまく表現できていない気もするが)。

何気に、この考え方には拡張性があって、色々な意味合いがあるのだけど、それはまたの機会に。

2012年7月28日土曜日

土曜昼下がりの原宿は、一人の男でつながった (「ミーハー仕事術」中村 貞裕)

学生時代から新社会人時代まで、代官山から新宿までを一日かけて歩いて、数多あるオサレショップを散策していて、その多くを、渋谷-原宿の明治通りと裏原宿で過ごしていたが、この1−2年は原宿には全く訪れていなかったようだ。

とある土曜の昼下がりに、久し振りに原宿周辺にいったら、知らない建物とか出来ているし、知っているお店も他の場所に移動していて、あ、やべ、オレ、ついていけてない、みたいな。まあ、原宿のターゲットセグメントからは外れているよね、オレ。と言い聞かせをしてみたり。

そんな中、特に印象に残ったスポットが二つ。一つ目は、「東急プラザ表参道原宿」。エントランスのインパクトが大。明治通り原宿の新しいランドマークになっている。

 

そして、もう一つは、「Egg Things」。パンケーキのお店。表参道から裏原宿に入ってちょっとしたところにあるのだが、表参道で既に50-100mとか並んでて、全部で150-200mの行列が。この暑い中、よくそんな並ぶなー、と。

 

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これらの印象深かった二つの新しいスポット。実は、一人の男で繋がっている。それが、Transit General Officeの中村 貞裕である。外苑前や代官山にある「Sign」を創った男と言えばわかりやすいだろうか。「東急プラザ表参道原宿」には直接的に企画で関与しているし、「Egg things」は、そもそものパンケーキのトレンドを創ったbillsを日本に導入しており、間接的に関係していると言える。私が印象深く感じたスポットは、彼がデザインしたモノであったわけだ。

そんな彼の本が、こちら。タイトルの通りで、なかなかユニークな内容になっている。昔から超ミーハーな私としては、非常に共感する箇所が多いのだけど、特に面白いと思ったのは、この二点。



彼はトレンドを創っているわけだが、スペシャリストではなく、ジェネラリストである。何かの専門性(例えば、空間デザインとか)を持っているわけではないのだが、
  • 時代を捉えるコンセプトデザイン
  • 広範なネットワーキングから実現可能である各領域のスペシャリストからなるチーミング
  • コンセプトを具現化する段階での全体のディレクション
といった所で尖った能力を発揮し、新しいトレンドを次々に創っている点。

もう一つは、時代の先を行き過ぎない、ということ。先の一つ目にある時代を捉えるコンセプトデザインに関連することだが、時代との距離感を見極めたコンセプトの設定が大事、ということ。何かを掘り下げていくと、ユニークなのかもしれないが、マニアックになっていって、時代・大衆から離れてしまう。この距離感の見極めは、相当難しいトコロだが。

2012年7月16日月曜日

セグメンテーションの難しさ (「入社10年目の羅針盤」岩瀬 大輔)

グローバルなトップノッチである岩瀬大輔氏の新著。本書は、タイトルの通りだが、入社10年目くらいのビジネスパーソンが直面するだろう課題の解決方法等に関して記述されていて、「入社1年目の教科書」が横展開された本である。



これらの本のマーケティング目線での目的は、彼が創業したライフネット生命の顧客獲得である。生命保険に初めて入るセグメントであろう、入社1年目の人たち。そして、ライフステージが代わり、入っている生命保険等の見直し等を図る機会が多いセグメントであろう、入社10年目前後の人たちである。彼らに対して、ライフネット生命の認知度を上げ、生命保険の選択又は見直しの際に、オプションに入れてもらえれば、というのが一連の流れである。

勿論、そのような企業側のマーケティング目線の内容を直接的に出しても仕方ないので、読者目線のベネフィットであり、筆者そして会社に関する信頼感を向上するだろうテーマとして、自己能力開発という課題に対する解決策の内容を詰めていったわけであるが、「入社1年目の教科書」は非常に良い内容が詰まっている。この本の実践を毎日継続すれば、1年で一人前のビジネスパーソンになるだろう。

他方で、「入社10年目の羅針盤」は、少し物足りなさがあった。それはなぜか?同じ様な形の同じ様な狙いの本ではあるのだが、10年目、というのは難しい。入社1年目よりも、入社10年目の方がセグメントの画一性が低いからである。10年もビジネスの経験を積んできただけに、その10年間の種類や質は多様であり、最大公約数的な課題を抽出して、わかりやすい解決策を書いたとしても、各人が納得感を得られる確度は低くなってしまうからである。

そういう意味で、横展開と言っても難しいのである。

と、なんだかマーケティング目線でレビューを書いてみたが、実際には、結構良いことが書かれているので一読の価値があると思う。個人的には、今よりも幸せになる方法、というのが引っかかった。
  • 他人と比較しないこと
  • 「慣れる」ことをやめて、いつも新鮮な気持ちを持ち続けること
一つ目は、幸せとは個人の絶対評価で決まり、比較評価から決まるものではない、ということ。二つ目は、当たり前のことを大事にして、幸せを実感すること。幸せとは回数を重ねることで色あせるものではないとも言えるだろう。

毎日の何かは、結局なんだか幸せであるという実感を自分が得るための何かなわけであり、もし、その総量を高める工夫ができたら、毎日がより良くなっていくだろう。そうした時の根本的な考え方としてとても重要なポイントだと思う。それらの考え方を基にして、毎日の色々にどのように対峙していくか、ともう一段階ブレイクダウンしてみる必要はあるが。

サヨナラ美容院難民 (mod's hair)

ということで、前置きが長くなったが、最近家の近くのmod's hairに行った。結論としては、次もこの店舗の彼女に切ってもらうことにしようと思っている。

なぜ、そう決めたのか?と考えたとき、仕上がりに満足した、というのと、良い時間を過ごせた、という二点に集約されるかな、と。つまりは、良いエクスペリエンスを得られた、と思ったわけ。

最初の仕上がりイメージの擦り合わせの時点で双方うまく話せた。普通顔合わせをした二人は多少は距離があるわけだが、彼女は外見と同様にナチュラルな話し方で話し始め、一気に距離を縮めてきた。その時点で、私は適切な情報を提供したいと思ったし、そんな中で彼女としてもよりイメージを具体化できるような情報の入手のためのやり取りをしようとしていたように思う。

加えて、ある程度高めの技術を持った人にしてもらったので、仕上がりも良かった。カットの仕方もちょいちょい自分の知っているテクニックが散見され、そのテクニックを見ることでこちらとしては安心したりともした。結果、なかなか満足がいくものであった。

mod's hairは、髪を切る、という 核となる提供価値だけでなく、ホスピタリティにも非常に力を入れているようだった。待合室には、iPadがあり、待ち時間を有効に過ごせる様にYouTube等を流している。美容室内は、幾つかのコンパートメントに分かれ、微妙にライトニングを変えている。シャワースペースのライトニングは青にしてあり、他とは異なる音楽をかけ、科学的なアプローチでリラックスを最大化する取組みをしている。

そういったファシリティ面だけでなく、店員のソフト面のコミュニケーションスキルも高い。カットしてくれた彼女だけでなく、他のスタッフのコミュニケーションスキルも高いように思えた。こちらが軽いジャブで提供したトピックに対して、掘り下げるまたは他に繋がるカウンタートークをした確率は高かった。豊かな時間を過ごしたと思う。

そんなわけで、僕は、次もmod's hairに行くわけですね。サヨナラ美容院難民。

 

2012年7月14日土曜日

永すぎた春・美容院難民・ドリフの雷サマ・また美容院難民・・・ (mod's hair)

髪を切る、というヤツはなかなか難しい。髪を切る人と、髪を切られる人との間で信頼関係が構築されないと、髪を切られる人が満足することはない。

では、信頼関係とはどのようになされるか?というと、所謂コミュニケーションてヤツの質に依存する。髪を切られる人は、どのような髪になりたいか、ということを明確にして共有しないといけない。他方で、髪を切る人も、髪を切られる人がどのような髪型にしたいのかということを自分なりに腑に落ちて切っていくために、具体的なレベルの確認のやり取りをする必要になる。

これらの関係構築をDay1から出来る二人は結構少なくて、とある美容院に行ってみて、髪を切られて、なんだか満足しないでサヨナラ、というケースは実に多いのである。少し満足していないけど、二回目、三回目、と行ってみるうちに、ある程度の信頼関係が構築されて、固定客になっていく、というケースが多いと言えるだろう。

かくいう私も、元々は後者のケースであった。大学の頃に友人の噂を聞きつけて、大学付近の美容室に行き出した。最初切られた時は、えらい短くなってしまったなぁ、と思って、それほど満足がいった記憶はない。しかし、二回目、三回目と行ってみて、次第にある程度の満足がいく様になっていったわけだ。

話はズレるが、なぜ、二回目があったのか?それは、美容師さんがオサレだったからである。私が彼女に初めて切ってもらったのは、20歳くらいの時で、彼女は21歳であった。お互い若かった。そんな彼女は、髪がピンクであった。オサレピンク。あぁ、オレはこの人に切ってもらえば、きっとオサレな大学生になるはずだ、と。そんな感じで、二回目があったわけである。

そんな彼女との関係は長かった。20歳くらいから、29歳くらいまで続いただろうか。その間に彼女の髪型は、アニーヘア、ツイスト、アフロ・・・と色々と変わっていったが、20代後半になると結構落ち着いていった。そんな中、彼女の勤務するお店が大学付近から、原宿に変わったこともあり、オレも原宿へ。オレはオレで無理な注文をしては、ある程度の満足を得つつ、通い続けたわけである。

しかし、転機があった。彼女が妊娠して、子育てで引退したのである。まあ仕方ない。そこからが美容院難民である。青山、表参道らへんのお店に幾つか入ったものの、一回目のハードルを超えられない。

そんな中で出会ったのが、ドリフの雷サマ(頭爆発気味のヤツ)であった。少し小太りで雷サマなパーマ頭の彼は、十分とは言えないオレのイメージコメントを咀嚼し、イメージ以上のものに仕立てたのである。所謂Day1の成功である。その後、数年の間、雷サマに切ってもらった。

それにしても、髪を切るといった文脈でも、信頼関係というヤツはなかなか難しいもののようだ。ある時期から、なんだか我慢ができなくなってきた。ちょっと流してないか、んー、なんだか満足がいかないな、といった不信感の積み重なりである。何度かそんなことを感じた後、私は雷サマを離れたのであった。

その後、家から歩いて3分のお店にしばらく通った後、最近引っ越しをしたので、私は、また美容院難民になったのであった。そこで入ったのが、Mod's Hairなのである。

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と、もともとMod's Hairのことを書こうとしたのだけど、長ーい美容院遍歴になったので、前編・後編に分けることにします!


信じる力 (バクマン。20)

"バクマン。"が終わった。先程最終巻である20巻を読み終わった。あぁ、終わってしまったという寂しさと、最高の終わり方からくる爽やかさが共存した読後感。そんな読後感のまま、最後のレビューを書いておきたい。

最近はそれほど漫画を読まなくなったのだが、"Death Note"のコンビが書いている本という噂を聞きつけて、一巻を読んでみて、その完成度の高さに手応えを感じて、毎巻楽しみに読んでいた。その19巻のうち、18巻で期待を超えていた。そんなに続けて期待を超える漫画なんてなかなかない!僕は毎回夢中で読んだ。一巻読むのに1時間とかかけて。

"バクマン。"の何が良かったのか?

一つ目は、構成力。ストーリーの全体構成を緻密に考え抜いた後に、各細部を創り込んでいることが見て取れる。本作で、漫画家である主人公達が夢を叶えた漫画と同じだ。コンセプトだけを重視してヒットして、惰性で生き長らえる漫画とは違う。主人公の成長に併せたアップダウンを適切に設定し、本当に最高潮で最後を迎えるという構成だ。

なぜ、このような構成を創れたのか?と考えたとき、”Death Note”での失敗があったからではないか、と推察する。"Death Note"はわかりやすいキラーコンセプトがあっただけでなく、緻密なストーリーの創り込みによって、期待をかなり超えた漫画だったわけだが、正直、後半は間延びした。もっと早く終わって良かった。恐らく筆者達もそれを実感していて、"バクマン。"では同じことを繰り返したくない、と思ったからなのではないだろうか。

それは、先にも書いた様に、本作で主人公が夢を叶えた漫画と同じだ。出版社側が連載をどれだけ長く続けさせようとしようと、アニメ放映には連載継続がベターだとしても、元から決めた構成を崩さない。つまり、筆者たちは、主人公達に自分たちを重ね合わせた。



二つ目は、表現力。表現力には二つある。一つは、画の表現力。人物の画は勿論、背景の画のクオリティも極めて高い。そして、人物描写の表現力。登場人物一人ひとりを丁寧に描いていく。立場の異なる一人ひとりに魂をこめて、各所で各人の目線で一つの物語を表現していく。物語は重層的でリアルで豊かなものになっていく。

また、これら二つの表現力において、細部が徹底的に描かれている、その妥協の無さに心が打たれる。考えて考えて考え込まれたその表現は、一つひとつの画とその一部、一人ひとりのセリフの各センテンスから、筆者らの妥協のない完璧を目指す息づかいが聞こえてくる。読み手である私は心を動かされる。

三つ目は、物語力。この漫画は、夢を叶える物語だ。夢は二つから成り立っている。一つは自分の仕事である漫画において、トップに立つこと。そして、もう一つは、好きな人と結婚することだ。二つの夢は密接な関係になっている。

夢を叶える道程には、挫折と成功の繰り返し、その中でライバルとの勝負や友情等が積み重なっていく。それは、決して平坦なものではなく、これでもかという試練に出くわしていく中で、主人公達が一歩一歩成長していく様があり、我々の感情は多分に移入されていく。そんな主人公達や他登場人物とのやり取りから創られる大小の物語は、先に記述した表現力も相まって、実に読み応えがあるものに仕上がっていく。



と、なんだかもっともらしい感想文を綴ってみたが、この漫画の良さの10%も表現できていないような気がする。ここまで読んでくれた方、ごめんなさい。

結局、僕は、この漫画の何に心を動かされたのか?

信じる力なのかな、と思う。自分の夢を信じる力。自分の能力の無限さを信じる力。友人を信じる力。パートナー(編集者)を信じる力。そして、好きな人を、好きな人が自分を想っていることを信じる力。そこに、圧倒的な純粋さを感じたし、他の何モノにも負けない圧倒的なブレない強さを感じた。現実を超えた、圧倒的な信じる力に心を動かされたのかもしれない。

ということで、一つの素晴らしい漫画が終わってしまった。この二人の著者の次回作に期待。きっと、"Death Note"、"バクマン。"を超える作品を創ってくるに違いない。この漫画の主人公たちのように。

2012年7月1日日曜日

「有言実行」できるか? (HONDA「負けるもんか」)

最近俄に話題になっているCMが、HONDAの「負けるもんか」。今年4月に公開されたCMのようだが、私はTVでは見たことが無く、とあるサイトでこのCMの存在を知った。まずは、Youtubeとそのナレーションを引用してみたので、ご覧頂けたら。

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頑張っていれば、いつか報われる。
持ち続ければ、夢は叶う。
そんなのは幻想だ。

たいてい、努力は報われない。
たいてい、正義は勝てやしない。
たいてい、夢は叶わない。

そんなこと、現実の世の中ではよくあることだ。

けれど、それがどうした?
スタートはそこからだ。

新しいことをやれば、必ずしくじる。
腹が立つ。
だから、寝る時間、食う時間を惜しんで、何度でもやる。

さぁ、昨日までの自分を超えろ。
昨日までのHondaを超えろ。

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HONDAのコーポレートメッセージは、「The Power of Dreams」だ。CM等のコミュニケーションの機会がある時に必ず出てくるメッセージである。創業者である本田宗一郎が大事にした言葉であり、その夢の力を基に、様々な困難に挑戦し、まだこの世にないモビリティを創り、新しい市場を創り、世界中の人たちを感動させた。夢を叶えるための力こそが、HONDAのアイデンティティなのである。

夢の力について、綺麗ごとではなく、厳しくて現実的な困難さへのチャレンジにフォーカスしているところに、このCMの良さがある。戦後日本が復興し、世界的な企業に成長してきたHONDAという会社に対して、共感している人は多いだろう。これまで本田宗一郎の本にもある通り、HONDAの成長は決して平坦ではなく、幾多もの困難を死にものぐるいで超えてきたところにあるということを、上のメッセージで思い起こさせるし、そういったがむしゃらな努力に対して、親近感を感じ、自分たちを重ね合わせる人も多い。このCMには、HONDAという会社に本来備わっているコーポレートブランドを今一度呼び覚ます意味合いがあるのではないか、と思う訳である。


他方で、このCMは、HONDAの社員に対するメッセージでもあるのではないか、とも思う。過去、幾度も不可能を可能にしてきたHONDAという会社に期待し、自分たち自身も同じ様な経験をしようと考えて入社してきた社員に対してだ。正直、先にあるようなHONDAのコーポレートブランドに反して、最近のHONDAの商品に魅力的な部分を感じることが少なくなっているからだ。リーマンショック後に様々な商品上のリストラをした今、ただのリストラではなく、筋肉質になった企業体質であるが故に、過去を超える様な新しい商品を世に出していくことができるのではないか。そういったポジティブな見方を敢えてしてみて、今後のHONDAの商品展開に期待していきたいと思った。

さて、このCMを見て、APPLEのCMを思い出したのは、私だけだろうか。ダウンサイドであった状況から、商品も業績も上向かせた契機になった「Think Different」のCMだ。メッセージ自体は異なるのだが、自分たちのアイデンティティを社内外に思い出させるという狙いは同じ様に感じる。そうした時に、HONDAは、APPLEのように、「有言実行」をすることができるのだろうか?綺麗なコーポレートコミュニケーションをするだけで終わる他の多くの会社とは違う会社ではないか?私は、結構期待しているんですよね。

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2012年6月24日日曜日

勝つことのみ善 (リーガルハイ)

ドラマ「リーガルハイ」が面白すぎる。最近のドラマの中では、群を抜いて面白い。ドラマというよりかは、創り込んだ舞台か映画を見ているかのようだ。ちなみに、4-6月クールのドラマの視聴率はこのようになっている。
  • 平均視聴率:10.1 %
  • 最高平均視聴率 「鍵のかかった部屋」:15.8%
  • リーガルハイ 平均視聴率:12.4%
今クールの中で、概ね4-5位に入っており、大衆受けを狙っていない尖った内容なのにこの視聴率は、及第点を与えて良い点数と言えるだろう。

一度も裁判で負けたことの無い弁護士と人情派の新米弁護士が、法的な難関に挑み、必ず勝っていく水戸黄門的(?!)な法律ドラマだが、面白さが詰まりに詰まっている。一体、何が面白いのだろうか?

主人公の強烈なキャラクター
主演は、堺雅人である。早稲田大学時代に舞台を立ち上げ、舞台を中心に活躍した後、NHK大河ドラマ「新撰組」に出演し、お茶の間でも知名度を上げ、以降は、ドラマやテレビで堅調に活躍している役者の一人である。温厚な中でも熱さがある、という役が多い様に思うのだが、このドラマでは、これまでの彼のイメージを裏切りまくる大違いだ。一度も裁判で負けたことのない彼は、頭は切れるが傲慢で、ウソをつき、トラップをかけまくる。特異な髪型と巧みな台詞回しは、そんなキャラを助長し、非常に面白いキャラになった。脚本時点で相当面白いキャラだったのだが、堺雅人の細かい演出によって、そのキャラクターを完成させたと言って良いだろう。

論理と感性のアウフヘーベン
主人公の論理力は高い。その論理力を強みに裁判に勝っていくわけである。この世の中は、論理とは別の軸で動き、決まっていくことが多い。所謂常識や偏見である。常識や偏見に対して、精緻に事実を把握し、それらの事実を積み上げて、ほとんどの人が元々は考えていなかった様なことに対して、納得をさせていく。これは、論理力によって為せる技である。しかしながら、論理力があっても、その論理力を使うための事実がないと、常識を覆す様なことは起きない。そこで、出てくるのが、新垣結衣である。彼女も弁護士役なのだが、論理力というよりかは、感情や人情等の感性を大事にして、行動している。それらの考動によって得られる事実によって、主人公は常識を覆す論理的なストーリーを創り上げるのである。

大きくは以上の二つなのかもしれない。他に、新垣結衣が奮闘しているとか、生瀬勝久と小池栄子のチープなやり取りが良いとか、里見浩太朗が良い距離感でドラマに好感触な刺激を与えているとか、色々あって、それらが全体のクオリティを上げているとも言えるのだが。

クオリティ的には、ダントツに1位な内容だ。クオリティを考えるともっと高い視聴率でも良いのに、と思うがそれも致し方ないだろう。クオリティが高すぎて、内容についていけない人も多いだろうからだ。今視聴している顧客層はある意味コア人たちなので、それらの人向けに続編を早くリリースしてほしいものである。

さて、次回は最終回のようである。主人公は勝ち続けるのだろうか。最後に、新垣結衣にやられてしまう、というのは有りな話であるが、私は、主人公は勝ち続けるという展開を期待している。実に楽しみである。

2012年6月16日土曜日

着こなし力の見分け方の一つ (UNIQLO)

洋服については、何を着るかも重要だが、どう着るかも重要だ。全身ブランドで固めていても似合うわけでもカッコよいわけでもないし、とあるパーツ一つを取ってみても、サイズの選び方や他のパーツとのトータルコーディネートで似合うかどうかは変わってくる。そういう意味で、ある洋服の料理の仕方、つまりは、着こなし力というのは重要だ、と思う訳である。

自分の着こなしを振り返ると、大学辺りから洋服にはそれなりにこだわって、向上してきたように思う。オサレ友人と、代官山から新宿まで、明治通り沿いを中心に洋服を見まくって、選んでは失敗しつつ、自分が着たい服と自分に似合う服の両方を兼ね備えたモノを選べる様になってきたように思う。

他方で、バイトや大学で結構オサレな連中に囲まれていたせいか、見る目もなかなか鍛えられたような。バイト友達とか、欧州旅行で靴を十何足とか買ってるとか、服飾系の大学で自分で作るとか色々いて、そういった面でも毎回行くのが楽しかったものだ。

そして、大学の頃の友人も。四年時に配属された研究室はなかなか面白い人が揃っていて、90%以上は大学院に行く学科だったのに、30%しか行かなかったという強者揃い。そして、彼らはなかなかオサレだった。その中でも、ベンチマークしていたのは三人で、一人は自分に近い代官山や原宿のお店が多い系、もう一人はマルタンマルジェラしか着ない系、そしてもう一人は安い系だ。

この安い系というのがなかなかのもので。原宿系等の洋服も着るのだが、UNIQLOをうまく合わせてくるトータルコーデが非常にうまいというタイプ。例えば、UNIQLOのカーゴパンツを着ているのだが、それを9分丈で着る、とか。男だけど、ジーンズをストレッチで着て上にパタゴニアのショッキングイエローをダフッと着る、とか。
「それ、どこで買ったの?」
と聞くと、
「え?UNIQLO!」
という回答。ここに、着こなし力がある、と考えるわけですね。UNIQLOだけど、どこかのオサレブランドのモノではないか?と考えてしまうっていう。

実は、最近同じようなことがあって大学の頃を思い出して、このエントリーを書いてみた。とある海外出張先の週末に、尖った同僚と観光を。
  • ボブなんだけど、その内側は数ミリで刈上げ。ツーブロックどころではない雰囲気
  • 多面的な色遣いとシルエットを混在させた、世界の99.99%の人は着ない服を着る
  • でも、人間的にちゃんとしている
っていう面白い方。色々と話していて、ギャルソンが好きだとのこと。その日も上着はギャルソンを着ていて、靴は現地で買った現地っぽい靴を履いているのだが、これまた結構似合っている。さて、このストレッチのジーンズは、どこのだろうか?
「で、このジーンズはどこの?(x-girlだと勝手に思いながら)」
と聞くと、
「え?UNIQLOです!」
と・・・。着こなし力。そういうことなんですよね。


2012年6月3日日曜日

大人のツモリ (cat's TSUMORI CHISATO)

「ツモリチサト」というブランドを聞いてみると、やはり女のコのブランドだなー、って印象を持つ。店舗の作りであるとか、色遣いでデザインを見てみると、とてもカワイー感じでステキだ。大学生くらいの頃だったら、こんな服を彼女に着てもらうのもあり、とか思ったものだ(勿論合うコにはである)。

2003年から、「ツモリチサト」にはメンズのラインがあるのだが、自分には合わないブランドだと思っていた。女のコのラインを踏襲してて、中性的な男が選ぶブランドであって、決して自分には合わないブランドだと思っていた。

そこで、最近知ったのが、「cat's TSUMORI CHISATO」である。
  • フェミニンでハッピー、大人のためのファンタジー溢れるブランド
というコンセプトの下、2011年から新しく発売されたラインである。

実は、最近までその存在すら知らなかった。夏物のシャツを買おうと丸の内の路面店街に買い物に行った際に、zuccaの横のカフェがなくなっていて、ツモリに変わっていたのを見て入ってみて、このブランドに気づいたのである。

  • かわいさもあるけど、遊び心がある。そして、かわいすぎない、色遣いやデザイン
という第一印象であり。その30分後には色々な検討をした後に、二つのシャツ購入に至ったわけである。恐らく数年前なら買っていなかったのだけど、子供が出来て、ちょっとした可愛さにより敏感になったのと、このラインのデザインが子供に受けそうだなと思わせたのも購入決定要因に入ったようだ。

ブランドの展開て、結構難しくて、ファミリーブランドを幾つも作るけど、違いがわからないとか、そもそも違うブランドになってしまっている、とか元々のブランドとの位置付けが難しかったりすると思うのだけど、このブランドについては、元々のブランドとは異なるセグメントをうまく掴んだ商品展開をしているのでは、と。即買いした者として、それほど説得力もなく、結論付けさせてもらっちゃうわけですねー。


2012年3月29日木曜日

水筒を再発明する (THERMOS)

大げさな首題をつけてみました。要は、ユーザーのエクスペリエンスを大きく変えることができたら、再発明と言って良いのかなと思いますけど、THERMOSの水筒もかなり変えているのではないかな、と。

元々は、スタバのタンブラーと同様に、経済合理的な観点から、導入を決めました。私は水分を非常に取る人で、缶コーヒーを一日に3本とか買っていました。なぜ缶コーヒーを一日に3本も飲むのか、と考えてみた時に、その1-2本くらいは削減できるな、削減しても良いな、と思ったわけです。

そんな中で、当時のオフィスの同僚の方が、THERMOSの水筒をお持ちで、
  • デザインがミニマルで、水筒を持つことが恥ずかくない
  • コンパクトでスペースを取らず、収納及び持ち運びが容易
と見てて思っていたのですよね。あぁ、これは今までの水筒が有していた課題を解決しているのだな、と。ということで、THERMOSを購入しました。利用してみて思うのは、こちらの点です。
  • 保温機能が優れており、長時間経過しても、冷たさ / 熱さ のレベルが落ちない
朝に冷たいお茶を入れて、夕方にそれを飲んでも、全然冷たいままです。だから、例えば、熱い飲物を飲む時は、火傷の注意が必要なくらい。通常しばらく時間が経つと、生温く感じてしまうのが、逆に、油断して火傷してしまう可能性があるっていう。保温機能が実に優れていることがわかると思います。一般に、飲物を携帯したとしても、冷たい / 熱いものを飲みたいですから、これまで諦めていた潜在ニーズにミートする、付加価値の高い機能を追加させている、ということができると思います。

以上を勘案すると、水筒を再発明した、と言っても良くないですか?言い過ぎかな?!まあ、エコというキーワードと、先のデザインと機能で優れた商品性とが共鳴して、売れに売れているわけですよね。再発明かどうかは置いておいて、優れた成功事例であることは間違いありません。

2012年3月28日水曜日

正しい資産形成の在り方 (「なぜ投資のプロはサルに負けるのか?」 藤沢 数希)

著者は、ブログ「金融日記」を書いている藤沢数希氏。彼のブログは、最近知ったのですが、ファクトベースで切れ味鋭い情報を発信しています。優秀なコンサルタントの様な多面的かつ論理的な展開をみせています。

元々、理学部博士卒で研究者であり、その後外資金融機関のクオンツ(高度な数学的手法を基に投資戦略や商品開発をする職種)に転身したということで、物事の根本まで定量的に突き詰める論理思考力を持ちつつ、自然科学だけではなく、社会科学にも柔軟な思考も持ち併せている、といった感じでしょうか。ブログもこの本も、とても面白い。


家族が増えたり、年をとってくると、中長期目線で住居や教育等の多大な支出がリアルに想定され、資産形成の方針を考えざるを得ないという人も多いのではないでしょうか。本書では、お金持ちになるため/お金に苦労しないためには、何の投資をすれば良いか?という疑問に対して、シンプルに回答しています。
  • 投資をしないこと
  • 自分の仕事を一生懸命取組んで、給料を上げるべき

非常にわかりやすい結論です。投資の最前線で働いている人による、ファクトを基にした結論なのでとても腑に落ちます。「よい投資法が必ずしもむずかしいものである必要はありません」とも。
  • 投資はリスクに満ちあふれている。どんなに優秀なファンドでも破綻する可能性がある(投資のスタープレイヤーで構成されたLTCMが好例)中、儲かる投資先を継続的に見つけることは、困難
  • 仮に、期待リターンを得ることができても5%程度(株式投資の場合)である。例えば、100万円を投資した場合、5万円でしかない。逆に、年間300万円を投資で稼ぎたいならば、6,000万円が必要
  • よって、目の前の仕事に一生懸命に取組んで、年収を上げる方が近道。リスクも非常に少ない

しかし、ある程度の資産が積み上がっている、または、積み上がったときを見据えて、投資をするならば、下記の投資が良いということも論理的に結論付けられています。
  • インデックス投資をする(TOPIX : MSCI Kokusai = 15 : 85)
これは、山崎元氏の下記の本の結論と一緒です。日本株と海外株の比率は異なりますが、記述の時期も異なることが関係しているでしょう。インデックス投資は、投資自体の面白さはないが、着実な投資方法として、両者に触れられています。



以上が、正しい資産形成のサマリーです。本中には、資産の構成要素と、各要素の重点項目についてシャープに説明されているので、一読をオススメします。日常生活の経済合理性を高めるには良い内容が詰まっています。

最後に、コラムの一部として書かれていたフィナンシャル・フリーダムについて、メモします。非常に共感ですね。
  • フィナンシャル・フリーダムをなるべく早く達成するには、経済合理的に賢く行動し続けることです
  • 長時間続けても苦にならない好きなこと、自分の得意なことをなるべく仕事にしてキャリアを構築し、起業等の機会をうかがい、これはというチャンスに出会ったらそのリスクに賭けます
  • そして、稼いだ金を効率よく投資に回します
  • 地道に自分の能力を磨き、時として人生に訪れる大きなチャンスをつかみ取れるように、いつも感性を研ぎ澄ませないといけません
  • 要は、「人事を尽くして天命を待つ」ということです

2012年3月26日月曜日

素晴らしきビジネスモデル (CANON PIXUS MG6230)

久し振りにプリンターを買いました。上述のを。親の分も買ったので、2台まとめて。結構良い買い物が出来たと思います。購入時の条件の主なところはこんな感じ。
  • 新生活への準備期間にあたり、最もプリンターの販売が盛り上がる、つまり、高まる需要に対して売り負けない様に、価格が下がっている3月末に購入
  • 更に、店頭販売が激化し、近隣店舗間で価格を下げ合う土日に購入
  • 商品を見極めたと同時に、既に安くなっている店頭展示価格から、更に値引きを交渉
  • パソコンとのセット購入を通じて、更に値引き
ということで、結果として、このような価格になりました。
  • プリンター単品価格:18,100円+10%ポイント → 実態価格:16,290円
  • パソコンとのセット購入による割引:2,000円 → 1台当たり1,000円割引(換算の必要もないが)
  • 結果、プリンターの本当の購入価格:15,290円
価格.comで調べてみると、最安価格はこちら。
  • 最安価格:16,099円
色々駆使した結果ではあるものの、全国の最安価格よりも800円くぐった価格で購入できた、というわけです。一つひとつの要素をつぶすことが必要ですね。




まあ、そういった買い物上手話も良いのですが、プリンターのビジネスって美味しいな、って話。

プリンターは、元々、消耗品ビジネスといわれ、プリンター本体を購入した後に、継続的に利用して行く上で必要になる、つまり購入されるインクで儲けているビジネス。継続的に購入されるのでそれだけで結構な金額に及ぶし、価格もプリンター本体に比べて、下落しないので、利益率も高いビジネスということですが。今回の買い物では、企業目線でのビジネスモデルの素晴らしさ、消費者目線ではあまり嬉しくない一面を見たのでした。

今回、自分の家分も購入したのは、数年前に購入したプリンターを使い続けることをやめる選択をしたためです。それは、このような経緯からです。
  • 長期間利用しなかったため、印字ができなくなった(インクが固まった模様)
  • 仕方なく、4,000円以上のインクも購入し、色々と操作を施したが、印字はされない
  • ろくな印字ができないにも関わらず、この時点で、半分以上のインクが消耗
  • 仕方なく、コールセンターに電話した結果、
    • まず、近くの修理センターに、現物を持ち込まないといけない
    • 修理可能な場合は、修理代が発生し、インク代は返らない
    • 修理不能な場合は、インク代は返ってくるが、修理代は発生
誰が修理するんですかね?という状況に陥りました。段階的に、コールセンターの方に交渉をしてみようと思ったのですが、その内、自分がクレーマーになることを恐れて、インク代4,000円以上を泣き寝入りして、新しいプリンターを購入することにしたわけです。

店頭に行ってみて、店員さんにプリンターの最低限の要件を伝えて、ベストなモデルを聞きました。
  • 印刷は、Word/PowerPoint/WebからA4で、加えて、年賀状も
  • A3/4の紙をスキャン
  • 無駄な配線をなくすために、無線LAN接続
結果、店員さんは首題のモデルを提案してくれました。他の候補と比較することで、意思決定の妥当性を高めようと思い、他モデルの可能性について聞いてみたところ、高価なモデルは、不要な機能がつくので、自分にはtoo much。他方で、より安価なモデルは論外の結論、つまり、下記の仕様を有していることがわかりました。
  • インクは、単色毎に交換することはできず、6色まとめて交換しないといけない
当然、黒色の減りは、他色より断然速いことが想定される。しかし、黒色がなくなったら、他色が恐らく6-7割程度あるにも関わらず、全て交換しないといけないということを意味します。6色セットは4,000円以上するでしょうから、2,000円くらい捨てる計算になりますね。イニシャルコストが数千円安くおさえられたところで、ランニングコスト(主にインク代)が断然高くつく。結果、イニシャルコストとランニングコストの和であるトータルコストも高くつく訳です。

プリンター自体の仕様の違いによって、そのようなインクの仕様は仕方ないのかなんなのか知りませんが、中長期的に消耗品を買い続けなければいけない、という消耗品ビジネスの特性を利用した利益向上の一つの打ち手ですね。消費者には全くうれしくない話です。

怖いのは、私が話した店員は量販店の社員だったので、上の情報をインプットされ、首題のモデルを購入するという意思決定をできたのですが、もしメーカーから派遣されていた方に話を伺っていたならば、このようなフラットな情報は入らずに、トータルコスト高のモデルを買っていたかもしれないということです。

ということで、プリンターを購入する時は注意が必要ですね。少し時間がある時に、ちゃんと話を聞いて意思決定するほうが良いと思います。

2012年3月22日木曜日

除湿器のある生活 (Panasonic F-YZG60)

最近まで知らなかった。除湿器というメカを。。。私は乾燥肌なので、小さい頃は加湿器がある部屋で生活をしていたことを覚えてはいるのだが、その逆で、部屋内の湿度を下げるために、空気中の水を取り除く除湿器なるメカがあったなんて、といった素朴な驚き。それを感じたのが数週間前の話である。

最近引っ越したのだが、鉄筋コンクリートのマンションのせいか、部屋が暖かい。1年で最も寒い季節であるはずの2月に暖房をつけずに過ごせるレベルであった。しかし、その代わり、ひどかったのが結露である。外気温と部屋内気温との差が大きいことから、窓やドア周辺部の空気が冷やされ、窓やドアに水が溜まる現象が起きていた。

結果、カビが出る。これまでカビのない生活、人生を送っていたのだが、引っ越してからバタバタしてたせいか、結露対策をしていなかったら、カビが色々な場所に出てきた。これまでカビなんざほとんどお目にかかった記憶がないのだが、その拡大の速度は思いの他著しく、結露対策をばっちりしなければ家中がカビだらけになる、という恐怖から、除湿器を購入したのである。

除湿器を購入するということで見てみると、除湿器には2種類あるよう。
  • コンプレッサー式:コンプレッサーを通して、空気を冷やすことで湿気を水滴に変える
  • デシカント式:水分の吸着に優れたゼオライトで水分を取り除く
首題のモデルは、後者のデシカント式。両者にメリット・デメリットがあるのだが、後者の方が冬でも問題ない、振動音が小さい等のメリットがあり、それを選択した(逆にランニングコストは高くつくのだが)。詳しくはこちら。加えて、店舗での価格、店員さんとの交渉等を経て、当該のモデルに決定したわけです。

除湿器を利用するようになって、勿論結露は減りました。しかし、まーだ出ますね、結露が。朝には窓をさらっと拭く(除湿器が無いと水たまりができていたので随分まし)というメンテナンスが必要のようですが、相当楽になりました。カビもほとんど出ていません。

これまでの結露無し生活が運がよかっただけ、と捉えて、部屋の空気や他メンテナンスをちゃんとせにゃならんな、と学んだ出来事でした。

2012年3月21日水曜日

結婚してないけど、結婚ソングの名曲を創る (「家族になろうよ」 福山雅治)

リクルートの結婚情報誌ゼクシィのCMで流れていた、この曲を聴いたことがある人は多いだろう。CDを借りたのだが、通常の曲だけでなく、結婚式バージョンも入っていて、うれしいことになっています。


昨年から度々耳にしていて、良いな、と思っていたのだが、実際に聴き込んでみると更に良い。これは名曲でしょう。うーん、カラオケで歌いたいなぁ。ということで、歌詞の中から、特に良いポイントを拾ってみました。

  • 「100年経っても好きでいてね」 みんなの前で困らせて それでも隣で笑ってくれて 選んでくれてありがとう
ここは、ベタな所なのだけど、そのベタさがリアルさを演出する。彼女目線の歌詞であるが、彼女の直球な想いのこもったメッセージと、包容力のある彼との距離感が、純粋で爽やかな二人を想像させる。ベタだからこそ、それがリアルに伝わる。

  • どれほど深く信じ合っても わからないこともあるでしょう その孤独と寄り添い生きることが 「愛する」ということかもしれないから・・・
ここはとても深い。いくら相手のことを好きで、信じていたとしても、わからないことはあるのかもしれない。逆に、わからないことがあるから一緒にいるのかもしれない。その二人の間に存在する永遠の何かを「愛する」と結びつけるところに、福山雅治の深い洞察を感じる。

  • いつかお父さんみたいに大きな背中で いつかお母さんみたいに静かな優しさで (中略) いつかおじいちゃんみたいに無口の強さで いつかおばあちゃんみたいに可愛い笑顔で (中略) いつかあなたの笑顔によく似た男の子と いつかわたしとおなじ泣き虫な女の子と
これまで彼女が刻んできた歴史と、これから刻んでいく歴史とを表現している。家族になることは、いままでの家族に加わり、彼らとの歴史を背負うことであり、新たな家族を加え、新しい歴史を創っていくこと、と言い表すこともできるかもしれない。今だけでなく、過去と未来を、そして、自分たちだけでなく、親・祖父母と子供たちを盛り込むことで、結婚の深さや広さ、そして、曲の世界観が格段に広がって行く。

以上、歌詞の良いポイントをピックアップして、触れてみたが、福山雅治の歌声に情感がこもっていて、とても心動かされる曲だなぁ、と思ったわけですね。彼は結婚していない訳ですが、このような名曲を創るのはスゴイな、と。聴くと、どうしてもしびれてしまう曲ですな。

2012年3月20日火曜日

アプリサービスの成功モデル (LINE)

少し前にNTT docomo(ドコモ)で通信障害が度々起きたことは、大きなニュースになった。要因について、「スマートフォンの普及と共に通信量が増大し、パケット交換機の処理能力がオーバーフローした」とドコモは説明している。1時間当たりの信号量が想定の1.3倍に達したという。

なぜ、このようなことが起きたか?ドコモの方々もプロとして、スマートフォンの普及率とそれに伴う通信料の増大については、幾つかのモデルを作ってシミュレーションを行い、数ケースの設備増強計画・実行について弾力的な対応ができるようになっていると想定されるからだ。

その背景として、「LINE」の爆発的な普及と利用による、と言われている。LINEとは何か?
  • 無料通話:LINEアプリを利用するユーザー同士ならば無料で通話可能。よって、キャリアの違いを勘案せずにいつでもどこでも無料で電話が可能
  • 無料メール:通話と同様にキャリアの違いを勘案せずに無料でメールが可能
  • 翻訳機能:英語、中国語、韓国語に翻訳可能(メールで)
  • デコメが充実:メールにおける絵文字やスタンプが沢山有り、リッチなコミュニケーションが可能
これらのコミュニケーションは、SNSよりも身近な友人、つまり、これまで携帯電話自体で行っていた仲の良い友人とのコミュニケーションをスコープとしている。よって、facebookやtwitter等とはポジションが異なる。また、無料通話として、skype等と競合するが、デコメを中心としたユーザビリティに重きを置きつつ、CM投下等による大々的プロモーションで絶大な支持を得たようだ。

LINEは、昨年の4月に開発を決め、1ヶ月半でサービスローンチ、10月から無料通話機能を実装、というスピーディな展開。立ち上げ自体はやはり苦戦して、twitterやfacebookで地道に利用を拡大したようだが、ある程度利用者が増加したのと、無料通話機能を実装したタイミングでベッキーのCMで一気に普及したようだ。あとはネットワークの外部性で勝手に爆発的に普及した。ちなみに、1,000万ダウンロードまでの到達スピードはこのようになっている。
  • LINE:6ヶ月
  • mobage:26ヶ月
  • mixi:39ヶ月
業界関係者が、サービスの普及スピードとしてベンチマークしているだろうmobage等を一桁上回るスピードであり。ドコモとしては、そもそも最初はノーマークのアプリで、ある時存在に気づいたが、対応の可否、内容等を検討する間もなく、通信障害を起こすレベルまでに普及してしまったといった感じだろうか。

ということで、スマホ自体の普及率の高まりに合わせ、スマホの基本機能である通話とメールにフォーカスし、基本機能の無料化と、緻密なマーケティングにより現行のサービスには無いユーザビリティの高い機能をアドオンすることで、現行サービスの代替ポジションをとった勝ちサービスが、ドコモ通信障害の背景にあったわけですな。なかなか無い事例だと思う。

2012年3月18日日曜日

ミシュラン三ツ星のホスピタリティ (藤沢 幸庵)

昨年の夏に藤沢にある懐石料理の幸庵というお店でランチをした。所謂懐石料理なのだけど、そこまで重々しい料理でも雰囲気でもなく、料理はとても美味しいし、店員さんのホスピタリティが極めて高いお店だな、ここはまた来たいお店だな、と記憶していたのだった。

最近、久しぶりに鎌倉のお家に行って、話に上がったのだけど、幸庵がミシュラン(2012)の三ツ星に選ばれたとのこと。なんとミシュラン3つ星のお店だったとは!ミシュラン三ツ星は、フランスのパリにあるアランデュカスで、めちゃめちゃ重々しい雰囲気で、めちゃめちゃ重いフレンチくらいしか食べたことがないので、先の幸庵が三ツ星に選ばれたのは意外だなー、と。なんでも、湘南で三ツ星に選ばれたのは、幸庵だけだというから素晴らしい。

ちなみに、食べログの採点はこちら(N=26)。個人的には結構リーズナブル。
  • 総合:3.92
  • 料理・味:3.92
  • サービス:4.05
  • 雰囲気:3.71
  • 酒・ドリンク:3.55

彼はよく行くお店だったらしいが、ミシュランで三ツ星をとって以来、最近はなかなか予約ができないらしいお店になってしまったらしい。元々馴染みにしていた人には、ミシュランに選ばれてしまうのも、いいのか悪いのかわからないようだ。

既存顧客と新規顧客。毎年ミシュランに選ばれ話題になることで、新規の顧客が永遠に来続けるならば良いのかもしれないが、それにも程度があるような。やはり定期的に来店する既存顧客の維持も必要であり、限られた席数の適切な運用が求められるのだろうなぁ。



あと、ミシュランの選定基準て、どんなものなのだろうか。例えば、アランデュカスと幸庵が全く違うお店なので、両方とも三ツ星であるように。国やジャンルが異なると、比べることは困難なような。調べてみると、星の評価はこちらの通り。
  • 一ツ星:その分野で特に美味しい料理
  • 二ツ星:極めて美味であり遠回りしてでも訪れる価値がある料理
  • 三ツ星:それを味わうために旅行する価値がある卓越した料理
タイヤメーカーであるミシュランが、車での旅行を促進するためのグルメマップを発行したことが起源であることを考えると納得の内容である(これらを規定する詳細な評価指標があると思われるが不明)。確かに、パリにあるアランデュカスは、このお店のために旅行したと言っても良いくらいのインパクトがあったのよね。味も店も価格も。

そんなわけで、国やジャンルにおいて、色々なミシュランの星有りお店で経験してみるのも面白いかも、とか思ったのですね。

2012年3月16日金曜日

投資としてのタンブラー (Starbucks ロゴタンブラー)

行動の意思決定の際に、基本的に、経済合理性を基準の一つにするタイプ。そんな私が少し前に導入したのがスターバックス(スタバ)のタンブラーである。最もスタンダードなコレを。


元々、スタバでタンブラーを利用する人というのが信じられなかった。スターバックスの信者ですか?と。しかし、多分、本当のスタバ信者と経済合理性導入者とに分かれるのだろうと思う。それは、こんな事実があるからだ。
  • タンブラーを持参した場合、カップの代替として扱われ、20円値引きされる

いつ、私がこの事実を知ったかは忘れたが、この事実に加え、ある時、行動パターンとしてスタバの利用回数増加の傾向を感じた私は、タンブラー導入を決めたわけです。
  • 導入コスト:▲1,150円(470ml用)
  • 購入に伴うサービスチケット:340円(アイスコーヒー Tallの場合)
これらの初期条件に対して、1回当たり割引20円とした場合、利用回数との関係はこちら。
  • 利用回数40回以下 → 導入コストを回収できず赤字
  • 利用回数41回以上 → 41回で黒字転換。回数増加に伴い、効果も増加
週当たりの利用頻度が、1回だと約9ヶ月強、5回だと約2ヶ月弱で、導入コストの回収が可能である。勿論、スタバに行かない(低コスト)で、スタバで得られる効用と同様の効用を得る選択肢もあるだろうが、スタバに行くことを前提とした場合は、以上の投資対効果があるわけです。

しかし、これらの条件がある時に、効果が出るまで、本当にタンブラーを利用するか、という実行性が一つのポイントになる。なんか恥ずかしくない?つか、毎回カバンに収納するのって面倒じゃない?と。私も、少し前は、結構ハードルが高いポイントだったと思う。

これらの懸念に対する行動としては、2点あると思う。
  • まず、やってみる
  • 可視化する
まず、やってみる、と良い。私の場合、最初タンブラーを買うことも恥ずかしかった。なんでだかわからないけど。でも、タンブラーを選ぶ時に、店員さんにお話を聞いてみて、とても親切にご説明を頂いたし(スタバの優れている要素の一つ)、タンブラーで注文をする時も、タンブラーを購入してまでスタバを利用してくれるような、ロイヤルティの高い顧客に対する彼らのホスピタリティは、タンブラー非利用者のそれの20%増と思われる(超勝手な印象で)。ということで、一度やってみると、恥ずかしさは、ほとんど意味の無いものだということがわかる。

可視化する、は、自分の取組みが目的の実現に結びついているかを把握するための継続的な仕組みの構築と運用を意味する。仕組み自体は簡単で、エクセルの四則演算で費用対効果を計算する、だけ。しかし、タンブラーの利用が進むにつれ、費用対効果の数値がポジティブに変化していくのを見るのはモチベーションがわき、タンブラーをカバンに収納し、注文し、利用した後も収納し、洗うという面倒さへの有効な打ち手だと思う。黒字転換時は素でうれしい。

そんなわけで、スタバでタンブラーを利用する、のも投資対効果の側面で見ても、一度やってみると良いと思います。

2012年3月15日木曜日

日本人デザイナーのきめ細かさ (zucca)

zozo town(zozo)が熱い。少し前の話で恐縮だが、zozoの年始セールで、以前からチェックしていたzuccaのリュックを購入した。元々、紫色を狙っていたのだがさすがに売り切れていて、黒にしたのだが、これもなかなか良い。価格は、元々の価格の半額である。zozo様ありがとー。

で、しばらく利用してみたけど、やはり良い。例えば、こんなところ。
  • サイズが大きい
    • リュックを使う目的は、容量の多い荷物を収納して移動でき、移動中の身体への負荷が減らせることだ(荷物の重心が、身体の重心に近づくため)
    • 他方で、リュックのサイズは、小さいモノが多くて、身体の大きい人が利用すると滑稽になるケースが多い
    • しかし、このリュックは、身長180cmの私が利用しても、全く違和感はない
  • 収納の仕方が多様
    • メインの収納スペースの他に、外周辺部に大小の収納ポケットが3つあるため、スタバのタンブラーやwimax等の細々した道具を楽に収納することが可能
    • メインや外部の収納においても、自然な位置にチャックポケットがそこかしこに。あまり利用していないけど、収納が沢山あると、なんだかうれしいw
    • かといって、騒がしい感じではなくて、全体はシンプルにまとめられている

かゆい所に手が届く機能性を有している、と言えるのかなと思う。そう日本人のきめ細かさを感じるのだ。ということで、「zucca」は日本のブランドです。デザイナーは日本人の小野塚秋良氏。イッセイミヤケの三宅デザイン事務所で経験を積み・・・

2012年3月13日火曜日

奥が深いバケツ (omnioutil)

バケツ一つをとってみても、作り手次第でステキな代物になるんだな、と鮮やかに学ばされた。それが、こちらの「omnioutil」。

   

何ともオサレな感じなのだが、まぎれもなくバケツ。
  • 5色あって、色は全て鮮やか
  • 大きさも3サイズ。色の種類の組合せにより、更にデザインに幅が
  • 耐荷重が150kgまで可能
  • GOOD DESIGN賞 2010年ロングライフデザイン賞 受賞
通常、アウトドア等で水を入れたり、食材を入れて洗ったり、と普通にバケツとして利用するのだろう。しかし、別にバケツ的な使い方に縛られることもないだろう、ということで、私の家では、玩具入れとして、LEGO、プラレール、積み木等を収納しています。収納して置いているだけでもオサレでうれしいのに、耐荷重が150kgまであるので、子供が粗く扱っても問題ないのもうれしい。

このような商品に出会うと、そこら中にある一つひとつの商品に可能性を感じる。一つひとつがもっとステキな商品になるのではないか、と。そうすれば、この世界の空間はもっとステキな商品で溢れ、もっと豊かな時間を過ごせるのではないか、と。

この製品を観察してみて、デザインファームのIDEOを思い出した。きっと革新的な人が、革新的なアプローチで商品開発をしたのだろうか。または、カラフルでありながらミニマルなデザインであることから北欧のインダストリアルデザイン会社のものだろうか。

 

しかし、調べてみると、「八幡化成」という岐阜県にあるプラスチック雑貨製造・販売会社によるもの。正直、驚きである。岐阜県から、こんなハイセンスのものが!(すいません、岐阜県の方。。。)

八幡化成のホームページを見てみると、「心が豊かに満たされる魅力あるモノ作り」をコンセプトに掲げている。他の商品もざっと見てみたが、なかなかハイセンスだ。モノ作りへの姿勢と結果作られた商品群に、とても共感を覚えた。日本にも、このようなデザインメーカーがあるというのは、なかなか良い発見。

そんなわけで、日々良い商品に出会いたいな、と再認識させられたわけです。おっと、私のブログのタイトルに通じますな。

2012年3月12日月曜日

最近のUNIQLO様のご様子 (UNIQLO GINZA)

3/16(金)に、銀座に世界最大規模の新店がOPENするらしく、銀座駅の構内は、UNIQLOの広告で沢山だ。non-noを筆頭に、11の女性ファッション誌とタイアップした広告展開、そして特集記事は凄いインパクト。さすがに、一度は新しくなった銀座店に入ってみようかと思わせる力がある。例えば、こんな感じ(価格が表示されているところは、H&Mじゃね?と思わせるが)。

 

また、今回の目玉の一つは、パリコレ等で活躍するundercoverとのコラボ商品である(ブランド名は「UU」)。これまで、+Jとして、モード感を持ち合わせた定番商品を展開していたのだが、売れ行きはいまいちで2011-12秋冬モデルで終了になったわけだが、それに替わって、UNIQLOのファッション目線でのハイエンドラインの位置付けとしてリリースされるようだ(以前あったようにシーズン毎にトップブランドのコラボが定番化するのだろうか?)。ちなみに、これは、家族服というコンセプトなので、私はドンピシャなセグメント。元々、undercoverは好きなので、幾つか購入しようと思います。

といった形で、最近のUNIQLOは、旗艦店を中心に、日本国内外で、相変わらずの出店攻勢を繰り広げている訳だが、個人的にはどうもインパクトが少ない。勿論、ここ1-2年のUNIQLOを見ても、社内公用語の英語化や新卒採用方法の柔軟化、等グローバル化目線で色々と手を打っているわけだ。

しかし、なんとなく最近のUNIQLOにはインパクトを感じられないのは私だけだろうか。それは、恐らく商品にインパクトがないからだ。勿論カスタマーインした商品(最近では、カラーボトムス等)やundercoverとのコラボ商品等があるわけだが、それらは現状の成り行きな展開に過ぎないからだろうか。

ヒートテックやフリース等の様に、衣料の素材レベルでの技術をテコにした商品開発や、ブラトップ等の様に、利用者の潜在的なニーズにまで掘り下げた商品開発等を通じて、新カテゴリーを創造した商品は最近出ていないと思う。

なんだか、UNIQLOって大きな会社になったのかな、と思う。新しい施策を打っているけど、それほど目立たない、インパクトを感じないというのは、成り行き施策の割合が相対的に多いからかもしれない。また、人材面でも、大企業と認識して入った人と、大企業にしようと思って入った人とでは自分ごと化意識も異なり、顕在化する施策にも影響が出てくるのかなとも思う。

ということで、少し前のこちらの本。2000年代中盤以降に、UNIQLOのブランド力とグローバル力を急激に底上げした立役者の面々についてまとめられている。この本が出た時点で既に退職している人がいるが、今では、グローバルコミュニケーション部をリードし、カンヌ国際広告祭で金賞をとった勝部健太郎氏も退職している。他の人たちもかなり退職しているのではないだろうか。



今後のUNIQLOはどんな風になるのか。依然として、気になる会社の一つであるわけです。

2012年3月10日土曜日

期待を裏切る構成を (おじゃマップ)

しばらく前に、スペシャル番組として放送していたが、最近レギュラーになった模様。SMAP香取慎吾とザキヤマとゲストが、日本のとある街に出かけ、アポ無しで当地の人たちを訪問し、絡むという構成が基本。スペシャルの時から知っていて、レギュラーになっても、個人的にはかなり面白く見ております。

日本のとある街にアポ無しで訪問する、というコンセプトは、他局の番組である「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」の一コーナーである「日本列島ダーツの旅」に似ている。現在の日本を一つの街で切り取った時に、当地が有するユニークな面白さや新しさがフォーカスされることで、何気ない街にある素晴らしさに気づくのである。地域経済の発展にも寄与するのではないか、とも思える良い目的だ。

しかし、「おじゃマップ」は、それに加えて、日本で誰も知らない人がいないのではないか?という人物である、SMAPの香取慎吾が現地に行く所に面白さがある。昔、素人に対するどっきり番組として、街で、素人にインタビューをして、最終的にはインタビューの話に上がった芸能人が現れて、素人を驚かすという構成の番組があったが、それを圧倒的に超越しているのがポイントだ。例えば、家でチャイムが鳴るから出てみると、玄関にSMAPの香取慎吾が立っている、という状況に突然直面させられて、驚かない人はいないだろう。素人が、純粋に驚く様を見るのはなかなか面白いのである。

さらに、この番組特有の面白さを書いていくならば、香取慎吾、ザキヤマ、スタッフの立ち位置である。
  • 通常、香取慎吾はトップスターとしてちやほやされているわけだが、この番組では、アポを突然とりにいかされるわ、スタッフに邪見に扱われるわ、番組収録のスケジューリングがきつきつだわ、といった具合に、なかなか厳しい局面に立たされていて、面白い
  • ザキヤマも、通常は、好き勝手やって、司会者等を困らせる役回りをしているが、この番組では、香取慎吾が好き勝手にやってしまい収拾がつかないので、実は、ザキヤマが番組を仕切っている。普段とは違うザキヤマを見るのも、面白い
つまり、我々視聴者の期待を裏切る構成になっているわけだ。面白さの基本は、予定調和を壊すこと、とは秋元康曰くだが、この番組では、それが実践されている。

とはいえ、これを毎週やるので、少々辛いようで、最近は、「オッハー」で流行語大賞をとった慎吾ママが復活、といったスパイスを追加している。今後はどんな展開を見せるのだろうか。企画の腕の見せ所だ。

ということで、この番組は、現時点ではとても面白いのだけど、予定調和を裏切る構成自体が予定調和になる時期は、そう遠くない時期にくるので、数年限定でレギュラーで続け、あとはスペシャル番組で続けてほしいな、というのが率直なところですな。


 

2012年3月9日金曜日

Amazonとモレスキン (MOLESKINE)

私は基本的に楽天派。楽天カードを主カードにしているで、還元率のアドオンやポイント利用に適しているため、楽天への依存が高くなってくる。楽天での買い物自体にも、お買い得なモノがあるし、商品構成の多様性から買い物自体の楽しさの魅力もあるので、楽天経済圏?!なるものに基本的に巻かれておこうかなと思っている。

しかし、当然かもしれないが、商品によって、Amazonが断然お得なモノがある。最近知ったのが、モレスキンである。1年以上の間、赤のモレスキンを利用してきて、やっと最近一冊が終わろうかというところまできたため、できるだけ安く買いたいと調べた結果、Amazonに行き着いたのである。こちらは、モレスキンのポケットシリーズの価格。
  • 楽天等通常のEC:1,800円
  • Amazon:910円
Amazonの価格は、楽天他のほぼ半額ではないか!グローバルでの仕入れによるボリュームディスカウントなのか(Amazonは楽天のプラットフォーム提供による手数料ビジネス(ブックは除く)とは異なり、自分でサプライヤーから購入し、在庫を持ち、流通させるビジネスモデル)、為替が大きく作用しているのか、本当の要因は不明だが、この事実を知ってしまうと、Amazonでモレスキンを買わない理由は見当たらない。はい、ポチッとな。

 

Amazonて、一般的に、IT企業と考えられていて、勿論、一側面ではIT企業であるのだが、片側面は小売業である。例えば、日本では、サプライヤーに対する価格交渉力は、他小売大手と変わらないレベルに達していると思われる。

それが、グローバルモデルの一括購入等のケースになると、更に有利な価格交渉が可能になるものと思われる。モレスキン以外のグローバル展開商品において、鬼安いものがあるのだと推測される。

ということで、基本的に楽天を利用するとしても、低い工数でありつつ、外部流出費を低減するために、価格や購入頻度の観点から、購入する製品を層別しつつ、個別に情報収集と購入ルートの判断が必要だと思ったわけですな。

2012年3月8日木曜日

広告でイノベーションをおこした人の話(「デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男」 ケネス・ローマン)

ブログで幾つか取り上げている様に、私は広告が好きだ。広告って、ラブレターなのよね。自分(企業)が、好きな人(顧客)に振り向いてもらうためのメッセージの結晶と考えることができる。

メッセージは、一言のこともあれば、論理的に事実を積み上げることもあるし、きらっと光る映像でアプローチすることもある。ラブレターの在り方は十人十色だ。相手の心を動かすために、どのようなメッセージをこめるかを考えてみるのは、面白い。

首題の著書のデイヴィッド・オグルヴィは、科学的な根拠と本質的なアプローチにより近代広告を創ったとされる人であり、この本は、彼の人生の話だ。フランス料理のコックに始まり、セールスマン、リサーチャー(ギャラップ)、スパイ等、色々な仕事をしてきて、最終地点は広告である。仕事がめまぐるしく変わりつつ、広告業界で成功に駆け上がっていくその人生は、実に面白い。

一見異なる職歴の積み重ねに見えるが、最終的に広告業界で成功するために必要な能力を断片的に獲得し、それらを繋ぎ合わせ結集したものとも見える。これは、スティーブ・ジョブズが言う、点と点の話を思い出させる。例えば、彼は、各体験から、このようなことを学んでいる。

  • コック:「ここで自分がやることは全て重要である。自分の行動の全てに誇りを持つ。完璧でないものは全てが悪い。」と教え込まれる → 自分がやること全てに、プロフェッショナルであること。自分の至らなさに不満を持ち続けること
  • セールスマン:「いつもどうやって売れるかという視点からものを見る。考えることはそれしかない。」という観点でトップセールスを上げていく → 売上は「よい」広告かを判断する尺度。人を退屈させておいて、モノを売ることはできない

本人が、その時々で最善と思える取組みをし、実経験から学びを得て、それらをちゃんと活かす。それらにおいて、圧倒的な努力をすれば、突出した成功を導き、自分のビジョンを実現することができる。かもしれない、という話。


2012年3月7日水曜日

新規事業の実践的・具体的な創り方 (「創刊男の仕事術」 くらた まなぶ)

実は、かなり昔に買って読んでいた本である。最近、本を大胆に整理しようと思い、全ての本に目を通して、エッセンスを抽出して、売却する、ということをしていたのだが、この本を再度読んでみると、新規事業を創出する際の大事なポイントが相当網羅されているので、売るには惜しいではないか、となった本なのだ。

これまで、新規事業戦略やら事業戦略やらで、多岐に渡る粒度・スコープ・フェーズにおいて、私自身取組んできたが、この本では、新規事業の取組みの過程で直面する壁と、壁への取組み方について詳述されている。

これらの壁というのは、実際にやってみないとわからないポイントだ。なんだかモヤモヤする、とか、本当に正しいのかわからない、とか、そもそも何から始めればいいのかよくわからない、とか。実際に新規事業に取組んでみると、色々あると思う。

そういった思い悩む読み手の目線を意識して、現場感溢れる具体的なアプローチが書かれているので、読んでみると、ストンと腑に落ちるのだ。新規事業に携わる人には必読の書だ。逆に携わったことがない、本気で考えたことがない人は、内容の消化率はあまり高くないだろう。



著者は、リクルートでの在籍20年間で、とらばーゆやフロムエー等14の新規事業を創出し、今のリクルートを創り上げたと言っても過言ではないだろう、くらたまなぶ氏だ。逆に彼がいなかったら、全く違うリクルートになっていたことだろう。企画屋というのは、0か100に近い世界なのだ。

彼が、これまで非常に沢山の新規事業に実際に取組んできた経験があるからこそ、その結晶化された方法論や具体アプローチの納得感は非常に高い。読んでみると、気が狂ったように没頭して、新しい何かを生み出してきたことがわかる。この一冊でそれを感じれるという意味でも、読む価値はあると思う。


2012年2月29日水曜日

その一言一動が心を動かす (築地 寿司清 新店)

ということで、毎週築地に食事に行くことにしております。今回行ったのは「築地 寿司清」。こちらは、色々な街に店舗があるので、何を今更、という印象を持った方もいらっしゃるかもしれない。私自身、渋谷や銀座等にある店舗には何度も行っている。でも、店舗名称にある「築地」にある寿司清に行ってみたかったのだ。

行ってみると、結論としては、良かった。味も美味しい(7段階評価で5.5くらい)のだけど、ホスピタリティ(気配り)面が大きく寄与している。例えば、こんな感じだ。
  • 客引きの段階で違う。築地場外の道を歩いていると、20代前半の女性が店前で客引きをしていた。私たちが子供連れなのをみて、座敷で直ぐに座れるメッセージを的確に発する。子供連れの方ならわかるが、バギーを押しながら混んだ道を行き交うのは容易ではない。そのメッセージを聞いて、私たちは直ぐにお店に入ることを決めた
    • ちなみに、客引きは、お客さんがあまり入っていないからするケースがあるが、この場合は異なる。11時過ぎにも関わらず、カウンター席は満員で待っている人が沢山いた。入り口のドアを自分で確認すると、入れないと通常判断してしまうが、実は座敷席が空いていたというわけだ。この座敷席をちゃんと埋めて、席の稼働率及び回転率を確実にするためには客引きは必要。座敷席分(未埋)×回転数を考えても、社員一人を客引きに張り付かせるのはROI的にも悪くないのだろう
  • 座敷は、通常座布団がしかれている程度だが、殿様のように座るイスがある。中座?!とでも言うのか、普通に座るのではなく、ちょっと座る様なイス。足を伸ばせるので、畳に直接座るよりも断然楽だ
  • 子供分として注文したかんぴょう巻の到着が早い。これは意識的に早くしていると思う。大人分の握りよりも、子供分の巻物を優先的に作ったということ。これにより、子供が待ちきれずに駄々をこねることを防ぎ、快適な食事時間を実現している
  • お店の人のアドリブもバランス感覚の優れた絶妙な加減を有している。最初のメニュー配布段階で、仲居さんが軽く子供に触れる(「男の子?女の子?あらー、そうなのー。みたいな」)。会計はカウンター付近であったが、職人の方がすかさず子供をいじる。会計でのクレジットカード処理時間すら退屈させないのだ
好きです、「築地 寿司清」。特別高くない価格帯でありつつ、十分な美味しさと、期待を超えるホスピタリティを有しているわけですな。これは、選んじゃうことになります。




関連記事:40年の歴史を食す (築地 井上)

2012年2月26日日曜日

青春の中にいる彼女らが青春を歌う (GIVE ME FIVE !)




先週のMステのAKB48"GIVE ME FIVE"を見た。去年の8月から、忙しい中密かにずっと楽器を練習してきて、演奏し、歌っている映像がステキでしたね。卒業シーズンに送る青春の歌、という位置付けなのだろうけど、彼女ら自身が今青春の中にいるのだろうな、と映像を見てて、思ったわけですな。

秋元康の歌詞も良かった。卒業を期に、一歩踏み出していく時の前向きな内容だ。高校生の頃を思い出させる様な瑞々しい光景が想起される、リアルな言葉が紡がれている。友達との距離感とか絶妙。歌詞がキラキラ光っているんだよね。なかなか良かったです。

それにしても、最近AKB48は応援してしまう。AKB48は、彼女達自身の成長を皆が見ていくことができるドキュメンタリー、みたいな話を秋元康が言ってた気がするけど、その通りにはまっている気がする。彼女達の挑戦に感情移入し、成功に喜んでしまうのだ。一部のAKB48ファンだけでなく、私の様な一般人でもそのような人が多いのでは?

なぜ、AKB48はドキュメンタリーとして成り立つのか?彼女達が努力し、挑戦している姿に胸を打たれるのです。それらが無いとドキュメンタリーとして成立しない。芸能界という華やかな舞台で華やかな姿だけでなく、その裏でとても努力している姿を見て、心が動くわけですね。

例えば、指原莉乃(さしこ)が代表格。最近、笑っていいとも!のレギュラーになったり、ソロデビューが決まったりしている。秋元康が、「最近の押しメンは、さしこ」と言ったらしいが、ただのえこひいきではなく、ちゃんと理由がある。

さしこは、2009年の総選挙で、選抜落ちを経験する。これにより、テレビになかなか出れなくなった。そんな状況の中、彼女がしたことは、例えば、こんなことだ。
  • 自身のブログで1日に100回更新することを挑戦し、アメブロで歴代一位の3,500万PVをたたき出した
  • 選抜落ちしたが故に、誰かが他の仕事で出れない時にさしこが出れる様に、「ポニーテールとシュシュ」等の曲の全ポジションをこなせる様に踊りを全て覚えた
その努力と結果の結実具合は、カラヤンが病欠した時に代役で指揮をやり、拍手喝采を得た小沢征爾を思い出させる。自分からチャンスを創ったし、目の前に来たチャンスはモノにしてきたのだ。これは、AKB48のメンバーの努力の一端に過ぎない。AKBの多くの人が、一人ひとり、自分のチャンスを掴むために、芸を磨き、チャンスを掴むために、積極的に活動している。

少し話が変わるが、私は、企画屋目線で、秋元康が凄い人だなと思うので、彼の本やぐぐたす(Google+)はかなりチェックしている。そこで思うのは、AKB48のメンバーは、身近な存在であり偉大な存在である秋元康の哲学を学んで、実践しているということだ。
  • みんなと同じくらい努力したくらいじゃ勝てない
  • 夢が叶う、叶わないを誰かのせいにしてはいけないということです。夢が叶うから続ける。夢が叶わないからやめる。そんなに甘くないです
  • 夢の方が背を背けることはない。あきらめるのはいつも自分から
  • 信じなきゃいけないのは、誰かのことではなく、自分自身に対して

 

そんなわけで、AKB48には目が離せない。ちなみに、冒頭の"GIVE ME FIVE !"の映像を見ていると、彼女らの完成度が高いレベルまで来たな、と思う。直近3年の間、5-6月にAKB総選挙をしているわけだが、今年あたりは、独り立ちできるメンバーは巣立たせるというのもアリかなと思った。まだまだ人気のピークを継続できるし、派生グループも含めて活発が激しい状況なので、来年あたりかなとも思うが、予定調和を崩す秋元康ならば、今年に動いてもおかしくないかなー、なんて思いました。

ちなみに、私の推しメンは、大島優子、篠田麻理子、さしこです。え、一人じゃないとダメなの?

2012年2月24日金曜日

セブンイレブンのプリンが好き。。。 (セブンプレミアム)

セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートと、大手コンビニ3社。各社が工夫をしてて、個人的には、3社とも許容範囲に入っているのだけど、弁当やパン等の食品類になると、セブンイレブンが一番いいなー、って思ってしまう。そんな人は多いのでは?ちなみに、私は、最近プリンがお気に入りだ。

コンビニ大手の一店当たり平均日販(2011)は、日経MJトレンドによるこちら。
  • セブンイレブン:62万円
  • ローソン:50万円
  • ファミリーマート:50万円
セブンイレブンは、ローソン、ファミリーマートよりも、一店当たりの平均日販が10万円(+20%)以上高い。冒頭のように、食品類の購買選択において、セブンイレブンを優先しているから?セブンイレブンの歴史と共に、もう少し見てみてみた。

まずは、セブンイレブンの一店当たり平均日販の経年推移を見てみる。
  • 1970年代:40万円
  • 1990年代:70万円弱
  • 2011年:62万円
他方で、セブンイレブンが取組んだ仕組み構築の変遷も見ていく。
  • 1970年代後半:多頻度小口配送
  • 1980年代:POSデータを活用した仮説検証型発注
  • 1990年代:取引先と商品開発するチームマーチャンダイジング
両者だけ(事業環境の内外の変化は乱暴に無視する)を紐付けて考えてみると、1970年代から1990年代にかけて、一店当たり平均日販を+75%まで増加を可能とした仕組みとして、多頻度小口配送と仮説検証型発注があると考えられる。POSデータで細かく分析し、仮説検証をしながら、適切な製品をきめ細かく発注し、販売するわけだが、これらを可能としているのが多頻度小口配送というわけだ。

しかし、1990年代以降、コンビニ店舗数は増加し、同一地域内の競争が厳しくなる。そんな中、範囲の経済として、他コンビニも含めて、情報端末や物流端末等の多機能化がはかることで差別化をしあっていく訳だが、セブンイレブンは、チームマーチャンダイジングにも取組んでいくことで主要な機能である商品販売を強化していった。要は、プライベートブランド(PB)の開発・販売だ。

POSで緻密に分析してみて、顧客の顕在・潜在ニーズにミートした商品を取り揃え、売上を増加させたいといった時に、既存のナショナルブランドだけでは不十分と考え、自分たちが主体的に商品開発をする必要が出てきた、というわけだ。また、一緒に開発することになるメーカー側も、セブンイレブンの販売力により可能となる工場稼働率の向上により利益増が見込めることは悪くない話であり、各領域で有力なメーカーが協力している。例えば、こんな感じ。
  • パスタ:日清フーズ
  • 牛乳系食品:オハヨー乳業
冒頭に、私はプリンがお気に入りだと書いたが、上述の通り、オハヨー乳業が製造している「じっくり直火の焼プリン」。オハヨー乳業は、モンドセレクションで金賞を連発している知る人ぞ知る乳業メーカー。この製品は、4つで198円のパッケージで、一つ50円弱の計算。通常1つ100円強のプリンが多いと思うが、この製品を知ってしまうと、他プリンはオーバーシュートしている製品としか思えなくなる。量は若干少ないのだが、オハヨー乳業の質の高い味でこの価格ならば、完全に満足できる量であり、これよりも量が多くても満足度はそれほど上がらない。POSデータを基にした緻密な分析により可能となる商品と言えるのではないだろうか。

他のコンビニも同じ様な取組みをしているのでは?勿論しているが、できるかどうか、どのレベルまでできるかは、トヨタ生産方式と同様に、別の話。セブンイレブンは、事実上の創設者であり会長である鈴木敏文氏により仮説検証型の仕事の仕方が染み付いているのだろう。こういった根本的な能力がなければ、例えアプローチが頭でわかったとしても、実行ベースではなかなかマネできない。

 

勿論商品開発はコンビニ経営の一側面であり、他の側面での闘いも意味はある。他コンビニ各社は、強みと弱みを両にらみしつつ、セブンイレブンに勝てる取組みが必要であるし、実際に取組みが見られる。そういった意味で主要3社の動きはとても面白いし、彼らの取組みを見ていくのは、結構好きなのですよね。


2012年2月22日水曜日

アラサーのあなたへ (トヨタ ReBORN ドラえもんのCM)

日本で車が売れない、と言われて久しい。自工会のデータによると、国内新車販売台数はこのように変化している。直近はさらに減少しているだろう。
  • 1990年:778万台
  • 2007年:535万台(1990年比 ▲31%)
そんな中で、自動車減税等が実施される等、経済面だけでなく、多面的な取組みがなされているわけだが、トヨタ自動車によるこちらのCMは、みんな印象深く認知したのではないだろうか。


漫画・アニメの「ドラえもん」の実写版のCM。のび太が30歳のときの。
  • のび太:妻夫木聡
  • ドラえもん:ジャン・レノ
  • しずかちゃん:水川あさみ
  • スネ夫:山下智久
  • ジャイアン:小川直也
  • ジャイ子:AKB48 前田敦子
個人的には、のび太、スネ夫、ジャイアンは、イメージ通り。ドラえもんとジャイ子はイメージ外し目的としてはアリ。でも、しずかちゃんは、イメージ通りのキャスティングを狙っているけど、石原さとみ、が適任なんじゃねの?と思った次第。



このCMの目的は、自家用車の「ReBORN=再生」だ。脱線が続いてしまうのだが、同じコンテキストで、同名のプロジェクト(eが小文字ではなかったが)を、新卒の電機メーカーでやった。かれこれ10年近く前。勿論規模は違うし、事業環境も異なる部分はあるのだが、基本的には同じコンセプトだった。うーん、誰もが同じ様なことを考えるのだなぁ。

CMの目的に戻ると、このCMによって、自家用車の販売台数を増加させたいと考えている。このCMが30歳ののび太ということで、アラサーの若者にもっと自動車に乗ってもらいたいのだ。アラサーの自動車保有率の数字を持っていないが、他のセグメントと比較して相当低いのだろう。CMを通じて、自動車の基本的な価値を認知してもらって、「まずは免許をとろう」「アウトドアには自動車で行きたいな」等と思わせて、自動車購入に繋げたいわけだ。

これらの目的に対して、効果はどれほどあるのだろうか?と考えた時、結論としては、このCM単体で考えるとなかなか難しいものがある。そもそも、なぜ、最近では自動車があまり売れていないのか?と考えた時、色々な要因が絡み合っている。例えば、こんなものがある。
  • 昔は、車を所有する家庭があまり無かったから、所有欲求が強かったが、最近は皆持っているので持つモチベーションが低い
  • 都心では公共交通が張り巡らされている中、自動車を利用することは、経済的にも、時間的にも、環境的にも、必要性が低い
  • 可処分所得や可処分時間のシェア争いの目線で見ても、スマホ、ゲーム等、車のライバルは強力かつ多様だ

ということで、他の施策との合わせ技が必要だ。結局、このCMは、ReBORNプロジェクトの一要素ということだろう。自動車保有の魅力への認知度で言えば、のび太と変わらない、アラサーの人々に、自動車保有の基本的な価値を認知してもらう。それが、このCMのゴール到達を意味する。実際に購入してもらうまでには、まだ幾つもハードルがあって、それらへの取組みはまた別ということだ。認知向上だけの目的に対しては、それなりに効果があるのではないだろうか。他にうまく繋がるかが重要だが、そこはどうなのだろうか・・・

このCMでは基本的な価値にフォーカスしているが、これからは、色々な面で自動車が変わっていくだろう。その頃には、私も再び自動車を持つのだろうか。

 

2012年2月21日火曜日

40年の歴史を食す (築地 井上)

めちゃイケのナインティナイン矢部のダイエット企画で、フジテレビのプロデューサーのガリタ氏と美味しい食事をしまくって、太るってものがあるのだけど、そのどの食事も本当に美味しそうで、みていると、こちらも本当に食べたくなる。



ということで、本当に食べに行ってみました、の第一弾。テレビでは、オールナイトニッポンの後の朝方に、ニッポン放送がある有楽町からほど近い築地に移動し、築地場外市場での二つのお店で、ラーメンと肉豆腐を食していた。今回は、ラーメン「井上」に行ってみた。

11時くらいに行ったら、既に結構並んでいる。20人強くらい。海外からの観光者もいれば、日本人の旅行者もいるし、頻繁にくる人もいる様だ。一度に10人弱のラーメンを作って待ち人数が減っていくので、結局待ち時間は15分程度(10人弱で5分の計算)。結構寒い日だったので、少し待ったなと思ったが、実際にはそれほどの時間でもないか。

食してみての特徴はこんな感じ。
  • 味は、醤油のさっぱり系
  • 麺は縮れ麺で、おつゆとよく絡む
  • 普通のラーメンしかメニューはないが、薄くて大きいチャーシューが4枚
  • 価格は650円
なかなかコスパが高い一品である。ちなみに、チャーシューはかなりお腹にくる代物で、ほとんどの人が1枚分を残していた。もはや3枚にすればいいのではないか?という風で。ちなみに、写真はこんな感じ。ラーメンと概観。ラーメンは、4枚のチャーシューで埋め尽くしている。概観左下の方が、おやじさん。

  

実は、並んでいる最中に、後ろの人が私に話しかけてきた。何でも、彼は、40年間、この井上に通っているらしい。別に近所に職場があるわけではなくて、自動車で付近を通りかかった時には立ち寄ってしまうという(自動車が鬼止めされていて、ミニパトに捕まらなければいいけどなぁ、とも話してきた。。。)。彼が言うには、
  • 40年前は価格が500円で、今が650円だから、本当に安い!こんなにうまいのに。もうけがないだろうなぁといった具合だ。なるほど、実感値だけでなく物価上昇率を考えても、相当安いなぁ(日銀HPにある消費者物価指数によると、2010年 / 1965年 = 3.94倍なので、単純計算で2,000円するはず)
  • 立ち食いのスペースの一部は、元々別のお店だったのだが、築地も競争が厳しく、閉店し、結局井上の食事スペースになった。安い価格なのに、井上は客が途絶えないので、順調な商売をしているのだろうね
  • おやじさんは、40年間皆勤賞で働いている。もう身体が染み付いちゃってるねぇ。飽きねぇのかなぁ(と言いながら、下町的な親しみに満ちた顔をしている)
といった具合の話が色々とされていた。私も、せっかくなので話を合わせて、色々と聞いてみた。常連ならではのなかなか面白い話であった。

めちゃイケのデブエットで紹介されたお店は全て興味深い。ガリタ氏は相当グルメだ。それらのお店を当たってみるのは面白いと思う。

そして、今回築地に来てみて、築地の活気と新鮮な食材による食事はなかなかステキであることに気づいた。引き続き、築地一帯を開拓しようと思う。こちらの本は、築地の場内・場外に関する食べ所と買い物スポットが地図と共に網羅されていて、かなり使えると思う。




2012年2月19日日曜日

商品開発者の熱い想いを知った上でアイスを食す (もっちりしっとり)

年末に大学時代の友人達と忘年会をしていました。その一人は、とある食品メーカーに勤めていて、最近では商品開発をしているとのこと。そこで、紹介されたのが、首題の「もっちりしっとり」のアイスなのです。イメージは、こんな感じ。


昨年末には、購入できるお店が、ポプラやミニストップ、と言っていて、好評につき、年明けから、セブンイレブンの東京西地区でも店頭販売されると話していました。でも、近くのミニストップにはモノが置いてないし、ポプラは近くにないし、セブンイレブンの西地区も遠いしで、結局食べずじまいだなー、と少し忘れていたのですよね。

しかし、最近中央区のセブンイレブンに行くと、あるではありませんか、そのアイスが。ということで買って、食べてみました。通常、パッケージから少しずつ出して食べるところ、このアイスでは、一度に全てを出してから食べる、つまり、アイスを掴んで食べられるようにビニールが包装されているつくり。触ってみると、もっちり感があって、デザートを食べる時に沸き上がる食欲をそそり、食べてみると、歯触りがしっとりしていて、オレ好みの印象を頂いたのでした。

年末に話したときには、商品の概要としては、こんな感じの話をされていた。
  • 誰に:OLや主婦
  • 何を:スイーツアイスで、一日のちょっとしたご褒美を
価格は、150円であり、アイスの中では上位モデル。パッケージも少し高級感があるつくりになっているので、納得な感じでした(すげー関西人のヤツで、パッケージがそいつを想起させる風でした。ターゲットが女性なので、もう少しかわいさがあってもいいかな、と思いましたが)。友達が開発した商品に実際にお金を払って、食べてみるのってなんだか感動するね。

一言で言うと、商品力のある商品なんでしょうね。コンビニの店頭商品は、POSデータによる定量分析で、週次で入れ替わる厳しい世界。しかし、ポプラやミニストップ等での販売から始まり、POSデータでの上位結果を受けて、セブンイレブンの一部地域で導入、そしてセブンイレブンの中央でも導入、ということで、順調にカバレッジを増やしています。昨今の小売業界では、パワーディーラーとのタフな交渉が伺えるわけですが、売れる商品だったら、店頭に置いてくれるのですよね。ディーラーは売上を増大させるためにPOSデータを駆使しているわけですから、非常に自然な話ですわ。

あと、プロモーションがゼロという話も面白い(メーカーHPで商品を探しても見つからないっていう)。SNS的な投資コストの低い取組みも含めて、プロモーションゼロ。それなのに、前述の様な順調なカバレッジの拡大を果たしているというのはとても興味深いですな。SNSをコントロールしようとしなくても、商品が良ければ勝手に口コミしてくれるやん、ていう。SNSがない時には普通にあった話で、コンビニの食品のように、ついで買いを誘導するような特性の商品の場合は、リアルな口コミの流れで購入というケースも多いのかもしれないですね。

真の顧客のニーズを満たす商品をちゃんと開発することができれば、売上は拡大できるのか。なんだかシンプルな話になりました。当然背景として、開発や営業における様々な部署が地道な取組みをしているのだけど、モノを売ることの複雑性が高くなっていると言われる中で、このような成功事例をみると、はっとさせられるな、と思ったわけです。


   

骨太なメッセージを創る(アサヒ16茶のCM)

新垣結衣のボブがかわいい。これほどボブが似合う人がいるのだろうか?と真剣に考えさせられる程のかわいさだ。CM等で出くわすと時間が止まるんだよなー。んー、まいったまいった。

と、いきなり脱線から入ってみました。新垣結衣も色々とCMをやっているわけですが、今回は、アサヒ16茶のCMの話。最近変わりました。新垣結衣が、子供たちと一緒に16茶を飲んで、踊っているCMに。まずは、こちらを見てみてみてください。


メインメッセージが、「まっすぐしみこむ元気ブレンド」となりました。古くは、16茶の成分を全面に出して、身体に良いよ、というメッセージだったり、朝に飲むと良いよ、等のメッセージがあったのですが、前述のように変わったわけです。

コミュニケーションにおけるメッセージは、誰に、何を、言うかが最重要であり、ここがしっかりとしていないと誰にも何も伝わらない、そして売れない宣伝になります。今回は、その両者を明確に変えた形になります。
  • 誰に:子供
  • 何を:元気さ(≒健康)
これらの背景としてあるのが、CM中でも訴求されている機能である、「ノンカフェイン」という部分です。カフェインのデメリットとしては、主にこんな要素があるようです。
  • 不眠
  • 興奮状態が続く
  • 落ち着きがない
カフェインの分解能力が弱い子供には、これらの影響を顕著に受けることが科学的に言われているようです。これは、子供だけでなく、妊婦や授乳中の母親にも同様のことが言え、これらのセグメントの人たちにはカフェインをとらないようにする人がとても多いというのが一般的です。

実は、私の家もまだ小さい子供がいるので、ノンカフェイン飲料を意識的に選択して、飲んでいます。しかし、ノンカフェイン飲料は少ないのですよね。お茶、紅茶、コーヒー等、基本的にカフェインが含まれています。そういったわけで、私自身、ノンカフェインである16茶をバルクで買っていたので、このCMを見て、おぉ、16茶もやっとそんなコミュニケーションをとるようになったか、と思ったわけです。

ということで、先に、このメッセージの対象を、子供と書きましたが、実際には、このようなカスタマーセグメントが対象になるでしょう。
  • 間接的ターゲット(16茶を買わないけど、飲む人)
    • 一桁歳程度の子供
  • 直接的ターゲット(16茶を買う人)
    • 一桁歳程度の子供を持つ親
    • 授乳中赤子を持つ親
    • 妊婦
最初、小さな子供とその親をターゲットセグメントにすると、スコープは狭いのかな、という印象を受けるかもしれませんが、厚生労働省の発表数値によると、平成21年度の出生数は約107万人。一桁歳程度の子供と妊婦の人数は、ざっと1,000万人程度が最大数と考えていいでしょうか。

そういったターゲットセグメントを前提としたとき、ノンカフェインの競合製品があまりないことを考えると、冒頭のようなノンカフェインを通じた、元気ブレンド、の訴求による購買喚起は、かなり強いメッセージングになり、数字に結びつきやすい打ち手なのかもしれませんな、と思ったわけですね。


2012年2月17日金曜日

メッセージで新しくする(サントリーなっちゃんのCM)

最近、松田翔太が「サントリー なっちゃん」のCMをやっている。元々は、田中麗奈が「なっちゃん」という仮想女優の成長ストーリーが始まりで、その後堀北真希等何人も同じ様な成長物語的な構成の下、CMが作られていた(7代目まで)のだが、松田翔太が出てくるっていう展開には、かなり意外感を持った人も多いのではないだろうか。え、なっちゃんなのに、なっちゃんがいない!っていう。そんなCMはこちら。





CMで着目されたのは、このコピーだ。


え、「今」ではなく、「2年前」においしくなっていたの?2年前の話を、今、大声でCMで宣伝しているのだから、意外感というか裏切られた感というか。まあ、とにかく惹き付けられてしまった、という人は少なくないのではないだろうか。

なぜ、2年前の味を今頃CMでつかっているのか?恐らくは、こんな感じの背景からなのではないだろうか。
  • 消費者テストでテイスティングをしてみて、評判が良かったのは、2年前にバージョンアップした味の要素
  • しかし、宣伝に関する定量指標を見てみると、味に関する認知度が低い
  • では、今一度、味にフォーカスしたCMをうつことで認知度を高め、購入に繋げよう
あるある、な話だと思うし、普通にアリな話だろう。コカコーラなんて、リマインド的な宣伝を継続的にうっているのだから。同じ飲料カテゴリであるサントリーなっちゃんで、近しい宣伝をしても何らおかしい話ではない。しかし、それを全面に出し過ぎな所にユニークさがある。

この宣伝がうたれた背景として、直近の市場調査が前述の通りあったという推察もありつつ、他方で、商品開発は継続してやっているが、大きなバージョンアップは、タイムライン的に少し先になるので、ひとまず、市場調査ベースの宣伝で購買を喚起、といった中長期的な位置付けも込みなのではないだろうか。そんな一つの打ち手にも、面白さをこめるところが、サントリー!って感じで好感が持てた、という話。