2012年9月1日土曜日

「気づく」のグループ的方法論 (「気づく仕事」 博報堂 研究開発局)



ビジネス、特に、企画という仕事では、「気づく」ことが重要である。ビジネスで収益や利益を上げるためには、顧客にとっての新しい何かを創造する、他の企業や商品・サービスとは違う何かを創造する必要があるわけだが、その源泉は、「気づく」ことから始まるからだ。

しかし、なかなか「気づく」ことはできない。予定調和に流され、毎日の忙しさにさらされ、何の違和感も感じず、いや違和感を感じたとしても対峙せずに、過ごしてしまって、何かに「気づく」こと、それを基点とした創造活動をしている人は少ない。

この本では、どのように「気づく」か、について、かなり考えられている。通常、「気づく」ことにフォーカスした本は少なくて、代わりに、クリエイティブシンキング等のアイデア創出の方法論に関する本が多い。

しかし、「気づく」ことは、何かを想像する際のタネなので、そのタネがないで、タネの育て方(アイデア創出方法論)を知ったとしても、良質なアウトプットはできない。片手落ちになってしまうのである。

よって、やはり「気づく」ことは極めて重要だと考えるわけだが、「気づく」ことに関する方法論がないわけではない。しかし、通常、観察法等による商品・サービスの潜在的課題・ニーズの特定といった、個人的なアプローチに依存しているモノが多い様に思う。これは、IDEOの本を読むと、あるパートで非常に詳しく書かれているので、別途そちらを読んで頂きたい(この本は、その内容だけに留らない良書だが)。


他方で、この本は、グループで「気づく」ことを促進する方法を提示している点で新しい。本中では、「共同脳空間」と言っている。人が何人か集まり話あうことで、「気づき合う」ということを方法論化しているわけである。

読んでみると、コンサルタントによるファシリテーションやブレストの方法論に類似しているように思われる(ホンダのワイガヤもこんな感じ?)が、「共同脳を駆動するさまざまなことば」として、人が集まって話をするときに、どのような言葉を使って話をすれば、話が広がり、深まり、「気づく」ことができるか?が具体的に書かれているのが、博報堂的なトコロ。

「気づく」ことについて、なかなか考えられていて、結構良いよ、この本。