2013年3月31日日曜日

一目でわからせる (「図解表現のルール」ドナ・M・ウォン/村井瑞枝)

ビジネスという文脈では、「あるテーマについて、自分が考えたことを、相手に伝えて、理解してもらって、動いてもらう」、ことが必要となる。しかし、この一つのセンテンスを純度高く実践することは非常に難しい。

そもそも、「あるテーマについて、自分が考える」こと自体難しいのだが(謙虚に最高を目指す人にとっては)、その大きな山を超えたとして、「相手に伝えて、理解してもらって、動いてもらう」ことも同様に難しい。そのためには、相手の置かれている状況を論理的にも感情的にも政治的にも分析した上での伝え方というものが必要になるわけで、この純度を高めるというのも実に難しい行程と言えると思う。

そんな中、本書は、伝え方にフォーカスしていて、特に、ドキュメントでの伝え方について記載されており、更に言えば、グラフと表を用いた伝え方についてのみ書かれた内容になっている。グラフと表を使うことで、こちらが伝えたいことを、一目でわからせるための伝え方について記載されている。


本書の正式なタイトルは、「ウォールストリートジャーナル式 図解表現のルール」。世界的な経済誌であるウォールストリートジャーナルでグラフィックエディターを務めている方が著者であり、訳者はJPモルガンやBCGで、相手を資料で説得する仕事をしてきた方である。

定量的な分析内容について、いかに正確に意図する内容を伝えるか、といった「ルール」が書かれているのだが、なかなか参考になる。私も結構資料は作成してきたが、定量的なデータの見せ方という文脈では、まだまだやりようがあるかな、と思っていたところで読んでみて、実に良い内容だと思った。最終的には、シンプルで美しさを備えていたりするものなのよね、この領域て。とても共感するところ。

ルールは、無視しない方が良い。勿論、局面局面で最高となるように考えていくわけだが、ルールを無視すると、無駄に考える量が多くなり非効率になるので。勿論、ルールを理解する過程で、ルールが存在する論理的な背景を確実に理解し、遵守するルールと、遵守しないで良いルールを層別しておくことが前提だが。

ちなみに、グラフと表以外も含めた、ビジュアル ドキュメンテーションについては、こちらもどうぞ。

2013年3月17日日曜日

広告系企画?(「発想の技術」樋口 景一)

否。広告だろうが何だろうが、何でも同じですね。基本的な企画のプロセスは同様。電通のコミュニケーションデザイン・ディレクターによる本書から引用すると、こんな感じ。
  1. そもそもの課題とは、いったい何か
  2. 本当の敵はなにか、本当の味方はなにか
  3. どういう価値軸を持ち込むのか
  4. 世の中にどう伝わるかたちをつくるのか
3, 4が、広告代理店出身の方の色が入っていますが、広告のプランニングについて誤解されているような、思いつく、ではなくて、考える、ことの大事さを一貫して説明している内容になります。具体的な内容は本書を読んでもらえれば良いのかなと思いますが、色々な角度から、観察して、考えて、見つける、といったことが、企画には大事です、ということが書かれています。



で、ちょっと思い出したのが、ガウディの言葉。こちらも、引用しておきましょう。考えること、創ることに対して、謙虚にさせられますね。
  • 世の中に新しいなどない、あるのはただの発見である。
  • 創造的たろうとして脇道にそれてはならない。
  • 通常なされていることを観察し、それをよりよくしようと努力すればそれでよい。
  • 私たちが心を開いて、努めて読むのに適切な書物は自然である。
  • 自然が創り上げたものこそ美しい。
  • 私たちはそこから発見するだけだ。

と、引用してみて、IDEOのイノベーションプロセスも思い出しました。こちらは、非常に好きな本質的なアプローチ。

2013年3月2日土曜日

「キャスト」の本当の意味を知る (「ジュビレーション」ディズニーランド)

33歳にして初めて、ディズニーランドのパレードを見た。最前列を確保した、という連絡がきて、開始までワクワクしながら待ち、パレードが始まった。パレードが始まって5分程経った頃だろうか。私の頬に一筋の涙がつたい始めた。楽しさはあっという間に通り過ぎていて、感動で涙が止まらなくなっていた。

ディズニーランドで働く人たちのことを、「キャスト」と言う。ディズニーランドそのものが舞台であり、そこで働く人たちは、各人の役割を演じているため、「キャスト」という。昔、経営学の授業か何かで知った内容だ。働くことに関するコンセプトメイクは非常にユニークで、記憶に刷り込まれてはいたのだが、私は、その本当の意味を理解していなかったようだ。

私が感動したのは、パレードにダンサーとして参加されていた「キャスト」の方々に対してだ。
  • ダンサーの方々のどなたをどの角度で見ても、目は活き活きしていて、表情は大きく豊かで、まさにチャーミング
  • ダンスの動作は大きくてわかりやすい。しかし、みなのダンスは確実に揃っていて、ダンスの単体・全体のレベルは高い
  • ダンサー3-5人程度で、一グループになっているのだが、グループ内で役割分担がなされ、曲に合わせて、ダンスだけでなく掛け合いがあったりして、そこには物語が存在している
  • ストリートを存分にフルに使っている。パレードが始まるまではただの道でしかなかったのに、物語の一部であろう全く違う世界が存在している
パレードは20分間続き、その間、上記の内容から外れることは一度もなくて、完成度は極めて高い。「夢の国」がそこには在って、その舞台で魅力的に演じている「キャスト」がそこにはいた。

「誰か」に「何か」を提供するために「真剣に」取組んだことがあるだろうか。商品・サービスでも、余興でも、プレゼンでも何でもいい。「誰か」を「真剣に」考えたとき、「誰か」の置かれている状況を、持ち合わせた事実の分析と、可能な限りの想像をして、その「誰か」が「何か」を受け取る状況について、あらゆる想定を置いてみる。そして、その「誰か」に最適な「何か」を創り込んでいく。その創り込みは、God is in the details.の世界。何度も考え、創り、そして、壊し、考え、創るをエンドレスに繰り返していく。最高の提供を目指したとき、それは、5分のプレゼンでも困難な取組みだったりする。

その難しさを考えたとき、20分間の「夢の国」を創ることは困難を極めることは想像に難くない。パレードの完成度の背景として存在しているだろう果てしない準備に、キャストの方々はどれほどの時間を費やしたのだろうか。

加えて、キャストの方々は、AKB48やジャニーズのように一人ひとりにスポットライトが浴びられることは決してなくて、パレードという一つの総合エンターテイメントを創り上げる、という純粋な想いが、先の果てしない準備を可能としていて、結果、「夢の国」を創り上げているという事実があったりする。

私は、「夢の国」の素敵な時間を体験するとともに、20分間の「夢の国」を創るキャストの方々の準備の大変さと、根底にあるだろう純粋な想いを感じてみて、感動し、涙を流さずにはいられなかった。

なかなか言葉では表現しきれない素敵な時間でした。また、パレードを、キャストを見に、ディズニーランドにいきたいと思います。