2013年4月30日火曜日

入門書のお手本 (「経営戦略論入門」波頭亮)

波頭亮氏の本を読むと、毎回腑に落ちる。本当にこの人は頭が良いのだな、と思うのですよね。複雑で入り組んだ難しい内容を実に簡潔にまとめ、その構造は洗練され、結晶化されていて、網羅的であるが、無駄が無く、具体性も織り込まれており、十分な奥行きがある。読み手の様々な理解度に対して、適切なアクセスがされていて、実にすんなりと腑に落ちて行く。毎回そんな感触を得るのが、波頭亮氏の本なのですよね。

特にこちらの本は、非常に素晴らしくて、頭を使うことが仕事であったり、うまく頭を使いたいと感じている人にはオススメの本ですね。とはいえ、小手先ではなく、本質的な内容が詰め込まれていて、ちょっとハードル高いかもな内容なので、色々な本をかじった後に、読んでみると良いかもしれませんが。




さて、この本は、題名の通り、「経営戦略論」の「入門」書になっています。「入門」書というものは、幅広く奥深い沢山の複雑な情報がある領域の入り口としての位置付けを謳っているわけですが、その要件として、当該の領域に関する全体像が俯瞰できて、その要諦を掴めること、と思っています。

そういう意味で、この本は、入門書のお手本の様な内容になっています。冒頭は、経営戦略論の変遷が書かれ、なぜ経営戦略が生まれ、どのような進化がなされてきたか、ということが、経営における歴史的な背景と、各経営戦略論の間の相関関係等が簡潔に記載されていて、その全体像を論理的に時系列的に理解することができる。

そして、時系列的な目線だけでなく、経営戦略論に関するパターンについても、方法論と強さの根拠の二軸で4パターンに分類されており、数多有る経営戦略の冠を持つ方法論やコンセプトについて、簡潔な整理がされているので、経営戦略論の全体像とその特徴を、体系的に理解することができる。

これらの内容が、本書を通じて、簡潔に記載されており、一文一文に無駄がなく、突っ込みどころもなく、文章が詰まっている。さらに、各章でポイントのようなパートがあるのだけど、その内容も更に結晶化された内容になっている。そんなわけなので、入門書としてのお手本でもありつつ、文章を書くこと、そして、まとめることのお手本でもあって、ダブルな良書だな、と思う訳ですね、これが。

と、ちょっと脱線したけど、そもそも経営戦略論とは、という全くの知識が無い人が、まず読んでみる本としても有りだと思うし、色々と経営戦略をかじってきた人が、構造的に整理し、その後、ミッシングパーツを認識して補充していく、といった整理の位置付けとして読んでみるのも有りだと思います。良い本です。

2013年4月28日日曜日

Webにおけるパーソナライズのあり方 (Gunosy)

一、二か月前のことだろうか。複数の情報源から、「Gunosy」というアプリサービスの存在を知り、早速iPhoneにダウンロードして、使ってみた。「Gunosy」とは何か?

 「スマートなパーソナルマガジン」
 「使えば使うほど、あなたの興味が学習し、より良い記事を推薦する」

こんなことがHPには書かれている。なんだか先進的なサービスのようだ。

と思った人も多いのかもしれないが、10年程前のことだろうか。SONYにCoCoonというチャンネルサーバーというカテゴリの商品があった。テレビの録画を繰り返していくと、自分の嗜好を分析・把握してくれて、その情報のストックが溜まっていくと、自分が録画していない見たい番組までサーバーが勝手に録画してくれるというもの。人口知能、つまりは、機械学習やデータマイニング等の高度なデータ分析を施すことで、これらのサービスを実現している。昔からあるアプローチなわけだ。

SONYのCoCoonは、大容量のサーバーも安くなっていき、他方で、デジタル放送等も増えていき、見れるテレビ番組数は増えていく。そんな時に、既存のテレビ番組表の枠に縛られるのではなく、自分「だけ」の番組表があったら、ステキじゃないか、というコンセプトが基点になっている。勿論、このコンセプトの実現には、既存の多領域にまたがるビジネスモデルのパラダイムを変えるものであって、難易度は非常に高かった。

他方で、「Gunosy」もそれに近い。ポータル、検索、SNS、とネットのサービスの主軸は変わっていき、より、ユーザーを中心とした世界になってきていると思われるが、一人ひとりが、ネットの世界で、自分にとって最適化された情報を閲覧できているか?というと、否、だろう。やはり、一人ひとりに最適化されたサービスを提供したいし、すべきである、といったコンセプトが基点の模様である。

個人的には、ネットのパーソナライズというのは、とてもステキな考え方で良いと思うのですよね。私自身そんなサービスを数年前から妄想していたりするし、で。で、そんな中で、「Gunosy」て、素敵なコンセプトなのだけど、どれくらい成長していって、プレゼンスを得ることができるのだろうか、と。

結論としては、イノベーター層にしか受け入れられないかな、とか思う。不便なんです、確かに、SNSの情報て。情報が洪水のようにあって、キュレーションて概念があって、そんな人がいても、自分が好きな情報だけをフォローしたとしても、情報が洪水であることには変わりなくて。その多くは、好きな情報でも、その時点で価値があると思える情報はごく一部で。でも、人は、そんな雑然さを求めるし、最適化してます、と言われて送られてくる情報を読むだけでは、十分だとは思えないのだろうな、と。実際に使ってみて、物足りなさが否めない。

そういう意味で、タイトルの内容についてですが、ある前提に基づくと結構難しいと思っていて、それとは異なる前提に立ってみると、結構可能性があるのかな、とか思っているわけです。なんのこっちゃですね、これ。まあ、置いておいて下さい。

ということで、「Gunosy」難しいな、と現時点では思うわけですが、このような技術を基点としたサービス展開というのは、個人的にはすごく応援したいと感じてるのですが。やはり、如何に、サービスの前提を日々疑い、刷新しながら、サービスを磨いていけるか、というトコロですね。もう少しウォッチしたいと思います。

 

フローだけど、ストック (Twitter)

最近、Twitterをやっている人がどれくらいいるのだろうか。ひと頃流行ってから数年経って、ログインすらしていない人が多いのではないだろうか。私自身そうなのだけど、最近、ちょこちょこTwitterを見たり、つぶやいたりしている。

やはり著名人や芸能人がいるから、彼ら彼女らの一次情報を収集できるというのは、大きな一つ。Facebookもできるようになっているけど、やはり出自が異なっていて、基本は現実的な知り合いがつながる世界であることを考えると、著名人や芸能人について、Facebookでフォローするのには少し違和感があるし、タイムラインに、そんな情報が混在するのにも若干違和感を感じるのよね。そういう意味では、著名人や芸能人の一次情報というのは、時が経ち、Twitterのトレンド具合が落ちたとしても、それなりの魅力があったりするわけなのですよね。(他方で、そんな潮流を見て、著名人や芸能人のTwitterでのつぶやき量が減っているのかもしれないけど、その人数がおそらく元々多いから、あまり気にならなかったりする。)

で、他方で、情報発信ツール、自分がつぶやく、という文脈でのTwitter。リアルな友人があまり活動していないせいか、結構好き勝手に、「つぶやいている」。まさに、という感じで。基本、目に入り、耳に入った情報はすぐにどっかに行ってしまう。それが、少し心や思考にひっかかったことだとしても。そんなフローな情報をつぶやく、ことに少し意味があるのではないか、と思ったりするわけですね。一時期、Twitterで書いたことを、Blogに書こうかな、とかとも思ったけど、それとも少し違うような気がしていて。思考を見える化するということ、そして、一応パブリックなトコロに出すことで、人に見られている感を前提として、文章化してみること。それを千本ノックのようにすることに、ちょっと価値があるような気がしているわけですね。

ということで、ちょっとそんなTwitter使いをしてみようかな、と思っています。ちょこちょこ、と。